現在、食肉科学技術研究所で採用しているサルモネラ属菌試験法はいわゆる公定法と言われる方法で、平成27年7月29日付食安発0729第5号医薬食品局食品安全部長通知により改正されました。この試験法は改正前の方法と比べて検出感度が高く、国際整合性のとれた方法であるメリットがある反面、検査日数が長いこと、異なる多くの培地を使うために作業が煩雑であること、検査員には熟練の技能を求められることなどのデメリットがあります。
輸入食品のモニタリング検査を行う検疫所では、リステリア・モノサイトゲネス及びサルモネラ属菌検査時間の短縮のため、平成28年10月7日付で3MTM病原菌自動検出システム(3M社)の使用が採用することとされました。
当研究所においても検査の迅速化は望むところであるため、サルモネラ属菌の検査に3MTM病原菌自動検出システムを導入できるかどうかを検討することとしました。
技能評価試験の概要
当研究所で調製した標準試料を自社で食肉、食肉製品の検査を実施している試験室(依頼者)に配付します。依頼者から検査結果を報告していただき、統計的処理により技能評価し、その評価結果を依頼者に通知するものです。
対象試験項目は、食品衛生法における食肉製品の規格基準に定められている、微生物検査では一般生菌数(定量)、黄色ブドウ球菌(定量)、E.coli(定性)、大腸菌群(定性)及びサルモネラ属菌(定性)、理化学検査では亜硝酸根を選択しました。特に亜硝酸根は、食肉製品中の残存基準値(0.070g/kg、70ppm)が定められており、過去に市販製品中の亜硝酸根が70ppmを超えて検出されたために製品回収の事態となった事例がありますので、製品中の亜硝酸根検査値が常に正しい結果であることは重要です。
検査技術実技研修会の概要

技能評価試験結果
平成28年度の検査項目ごとの参加者数は以下のとおり、延べ352名でした。一部の食品事業者では、複数名が参加されました。

黄色ブドウ球菌検査では、2回とも参加者の報告値の“ばらつき”が非常に大きい結果でした。参加者にご記入いただいた検査工程記録書を精査すると、菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースも多く認められました。
検査結果を陰陽性で判定する定性試験項目ではコロニーの発生を認めているものの、コロニーの色が薄いなどの理由から陽性を陰性と誤って判定したケースや、配付した2つの試料を取り違えたと推測された結果もありました。
亜硝酸根検査では、参加者計45名のうち39名は良好な評価結果でした。不適切と判定された結果について検査実施記録書の回答を精査したところ、分光光度計による測定値を検量線に代入し試料液中の亜硝酸根濃度を求める際の計算式や希釈倍率などの算出方法に誤りがあったことが原因であった結果もありました。また、濃度単位のppmからg/kgへの変換の仕方がわからないといったご意見もいただきました。
初年度精度管理事業を終えて
初年度の取り組みとしては、行き届かないところも多々ありましたが、大きな問題はなく終了することができました。検査技術実技研修会では「本で理解していたことを実技で確認できた。」、「参加者同士で交流ができ、有意義な情報交換の場であった。」などの感想をいただきありがたく受けとめています。
初年度を終えて感じていることは、この2つの事業を『継続』していくことによって食肉加工業界の検査の信頼性確保の維持に、微力ながら協力してまいりたいということです。
終わりに、2つの事業の一部は、(公社)日本食肉協議会の「食肉加工品検査技術の高位平準化事業」の助成により実施することができ、今年度も引き続き実施できる運びとなりました。ここに改めて感謝申し上げます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部長 松永孝光



