ここ数年、消費者の食の安全に関する意識の高まりや調理済み食品の普及、世間を騒がせた食品への異物混入事件等により、消費者からの異物クレームが増加する傾向にあります。このようなクレームが発生すると、製造者は、消費者への適切な説明と同時に再発防止策を速やかに講じる必要があります。再発防止策を講じるためには、食品に混入した異物を同定又は推定し混入原因を調査することが必要です。

異物とは?

実際に当研究所で検査したクレーム品の中には、製品に付着した白い結晶(アミノ酸)、食肉製品に認められた褐色物質(結合組織)、鶏肉加工品に付着した白い物質(牛脂肪)等原材料に由来する物質や食肉の変色(脂肪部分の緑変)事例もあり、必ずしも上記の定義に当てはまらない物も「異物」として認識される傾向にあるようです。

異物の規制について

食品への異物混入は法律によって規制されています。食品衛生法では、第6条第四号に「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある食品又は添加物は、これを販売し、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」と書かれています。また、PL法(製造者責任法)も製造物の欠陥により、人の生命、身体又は財産に損害を被ったことが証明された場合に、被害者は製造会社に損害賠償を求めることができると、製造物への異物混入を規制しています。対象となる製造物には、食品も含まれます。このように異物混入は製品の価値を低下させるだけでなく、人の健康を損なう原因となる異物であった場合、法律違反となり罰則を受ける可能性があります。このようなことが起きれば、企業のイメージダウンは免れません。したがって食品製造工場は、異物を正確に特定し、適切な再発防止策を速やかに構築することが重要となります。

異物検査の事例

前述のように、異物検査の中には、必ずしも異物の定義に当てはまらない原材料に由来する物質や食肉の変色等の事例があります。このような場合も異物検査を応用し数種の検査を組み合わせることで、異物の特定や推定が可能です。
事例1:鶏肉加工品に付着した白い物質
目視及び実体顕微鏡観察により外観、硬さ、性状の確認をすると、物質は透明性のない白色で、メスで簡単に切ることができる程度に軟らかく、一部を手に取ると融解したことから、脂肪の可能性が考えられました。次に極性の異なる試薬に浸漬し溶解性を確認すると、水のような高極性溶媒には溶解せず低極性溶媒に溶解しました。
したがって物質は脂肪と考えられました。さらにPCR法による畜種鑑別試験の結果、物質から抽出されたDNAバンドは牛のDNAバンドと一致しました。以上のことから、物質は牛の脂肪であると推定されました。
事例2:食肉(豚ロース肉)の緑変変色
目視及び実体顕微鏡で試料全体を観察すると、試料の脂肪側に黄色及び緑色の変色が確認されました(図1)。 カビを疑い変色部分を生物顕微鏡により観察した結果、カビに特徴的な菌糸や胞子は認められず、カビ臭もありませんでした。変色の原因にPseudomonas属菌が関与している可能性を検討するために、試料の脂肪側にブラックライトを照射し蛍光を確認したところ、変色部分に明瞭な蛍光が認められました(図2)。
さらに、微生物検査に供したところPseudomonas属菌が確認されました。以上のことから、試料の変色はPseudomonas属菌が原因と推定されました。

食品製造工場では、常に製造工程で異物混入が起きないようチェックをされていることでしょう。しかしながら万が一、異物混入が発生した場合は、速やかな異物の同定や混入原因の推定のために、ぜひ異物検査をご利用ください。
Pseudomonas属菌は自然界に広く生息するグラム陰性、好気性細菌です。タンパクや脂肪を分解する酵素を産生し低温下でも発育するほか、蛍光色素を産生する菌種も多く、食肉の変色、ネト産生、腐敗臭の原因となる細菌の一種です。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部理化学部 吉田由香