食肉製品に認められた変色を中心に
消費者が食品の品質を確認するとき、第一に見た目(視覚)を使う場合が多く、その中でも“食品の色調(イロ)”は、品質確認の判断材料として消費者が最も頼りにする情報といえます。言い換えると、食品の変色は、消費者からの指摘を受けやすい要素であり、その傾向は食肉および食肉製品においても例外ではなく、昨今の社会的風潮においてこのような指摘は、その変色が食品衛生上安全であったとしても大きな経済的損失につながりかねません。
そこで今回は、食肉製品に認められた変色事例の中で、特に亜硝酸塩や硝酸塩などの『発色剤を使用していない製品の変色事例』を取り上げます。
なお、食肉および食肉製品(発色剤使用)の変色事例については、過去に掲載したコラム#39及び#43をご参照ください。
発色剤を使用していない製品の変色の事例
*事例に該当する写真については、文末で確認することができます。
事例1:発色剤無添加で加熱された食肉加工品に認められる赤色
原因:加熱によって変性しなかったミオグロビンの存在
発色剤を添加せず、かつ衛生的に十分な加熱を受けた製品が、赤色を呈している事例です(写真1右)。
消費者はこのような色調を『加熱不足によるもの』と考えてしまうので、クレームの対象となりがちです。通常、加熱した肉が褐色(茶色)になるのは、加熱によってミオグロビンが変性し、ミオグロビン中の鉄が還元状態(Fe2+)から酸化状態(Fe3+)となるためです。一方、この事例のように加熱しても色調が未加熱時のように赤色のままである現象を単純に説明するとすれば、加熱後のミオグロビン中の鉄が還元状態(Fe2+)にあることになります。
この事例の要因として、多く認められるのは、ミオグロビンが衛生的な加熱条件によっても変性せずに残存しているケースです。ミオグロビンが変性しなければ、それは未加熱の食肉と同じ状態であることになります。この未変性のミオグロビンが微量であっても、変性したミオグロビンと混在すると、全体的な褐色(茶色)の中で赤色が目立って見えるため、変色と捉えられることになります。
ミオグロビンは80℃でも変性しないものが存在します。さらに原料肉のpHが6.0以上の条件、あるいは酸素と接触する機会がない(食肉の中心部)条件にあるミオグロビンは、熱安定性が高いと言われています。したがって、この現象を抑制するためには、pHが低い原料肉の使用やpHを下げる処理、製造工程で酸素と接触させる処理(例えば、空気下でのタンブリング処理)などが考えられます。とはいうものの、最も重要なことは、赤色の原因究明よりも(原因はFe2+であること)、その加熱された食肉加工品が衛生的に問題のない製造工程を経ることです。衛生的な加熱が証明されれば、問題のない現象といえます。
そのため、原料の受け入れ、処理、加熱、包装工程を含む“製造記録”や製造した製品の賞味期限を担保する“保存試験”などをもって証明することがポイントとなるでしょう。
事例2:食肉製品における黄変
原因:乳酸菌によって産生された黄色色素
真空包装した食肉製品において、微生物が増殖し、黄色色素を産生することによって黄変する事例です(写真2)。同時にネトの発生や酸臭(Acid odor)も認められることがあります。このような事例で黄変した食肉製品から、Enterococcus属あるいはLeuconostoc属の乳酸菌が同定されたとの報告があります。この両者の特徴は異なり、前者は環境にはあまり認められず、ヒトや動物の糞便から分離される乳酸菌に対して、後者は環境に普遍的に認められる乳酸菌です。Enterococcus属が同定されたとすれば、作業従事者の手指を含む衛生面に問題がある可能性が示唆されます。また、Leuconostoc属は、植物原材料の発酵物に生息して食品を腐敗させる場合が多いため、食品工場内での一般衛生管理と同時に原材料の管理にも十分注意する必要があります。
このように、同じような黄変であっても、同定される微生物が異なれば、その黄変の意味は大きく異なることになるのです。
変色をはじめ異臭・異物等クレームでお困りのときはぜひお問合せください。当協会は、食肉や食肉製品について豊富な経験と実績のある検査員の集団です。皆様のご相談に応じます。

文責:一般社団法人 日本食肉加工協会
食肉科学技術研究所
専務理事 吉田由香



