HACCPシステムに基づく衛生管理講習会(食肉製品)
HACCPシステムに基づく衛生管理講習会(主催:(一社)日本食肉加工協会)が、2026年1月20日~23日の4日間、対面で開催されました。当研究所は講師として協力させていただいています。今回のコラムでは、本講習会の概要とHACCP管理のポイントについてお話しいたします。
講義スケジュール
1日目は、「HACCPシステムの概要と食肉製品に係る危害分析及び微生物制御」について、麻布大学の森田幸雄先生にご講演いただきました。基本的な衛生管理から、HACCPシステムの7原則12手順に加え、食中毒に関連する微生物情報について最新の情勢を踏まえお話しいただきました。食肉科研からは「食肉製品の製法と規格基準及び微生物管理について」と題し、基本的な食肉製品製造の流れと各製品群の規格基準をお話ししました。受講生の中には、日頃製造に携わっていない方もおられますので、モデルプラン作成前に製造に対するイメージが膨らむよう始めに基礎的な知識をお話しすることにしています。その後、「食肉製品製造工場における一般衛生管理」をお話しして1日目を終了しました。
2日目は、一般衛生管理に続き、「食肉製品のHACCPによる衛生管理」についてお話ししました。一般衛生管理は工場では当たり前に実施されているものですが、残念ながら毎年衛生管理不足を原因とする食中毒事故は無くなることがありません。法規と照らし合せながら学ぶことで、普段実施している衛生管理とHACCPの繋がりを改めて認識していただく良い機会になったと思います。
モデルプラン作成と発表
2日目は、「HACCPモデルプラン作成」のための検討演習をしました。受講生は、架空のハム会社のHACCPチームメンバーとして4班に分かれ、1班、2班はウインナーソーセージ、3班、4班はロースハムを対象に各班(1)製造工程フロー図、(2)危害要因リスト、(3) HACCPプランを作成しました。実際はHACCPチームを結成した後、自分たちでプランを作る製品の「製品説明書」を作成しますが、演習では事務局が「製品説明書」を提供しています。自分が作成した気持ちで目を通して頂き、製品の概要を掴んだうえで、モデルプラン作成に取り組むことから演習がスタートします。その他に「製品説明書記載事項以外の条件」を提示し受講生に課題を与えることにしています。その1つを紹介しましょう。
製造工程フロー図は、通常製品に使用される全ての原材料について受入れから製品となった出荷までの工程を一連の流れとして作成します。本講習会では、この工程フロー図をあえて未完成の状態で、「食品素材は3つに分かれています。製品説明書と照らし合わせて、素材が3つに分かれている意味を考え、危害分析してください」という課題として提供しています。これは、まず受け入れる原材料にどのような危害があるのかを検討すること、その危害を分類したうえで適切な管理方法を選択する流れで危害分析に取り組んで欲しいという意図があるためです。
3日目は、2日までの検討を踏まえ「モデルプラン作成演習」に取り組んでもらいました。各班とも活発な議論が進む中、互いに経験のある工程管理に関しては、自社ではこのように管理しているけれど、今回我々の班としてはこのような衛生管理をすることにしましょうかなど、意見交換し班のメンバー全員で進めていました。『自分達のプランを作る』という主旨を理解し、危害分析に悩みながらも取り組まれていたと思います。完成したプランは資料を活用しながら全員で振り返り、発表に向けて意見の擦り合わせをしていました。また、最終チェックで気になった点など意見があがった班は、時間の許す限り熱心に修正していました。
最終日となる4日目の発表では、皆さんに発表とともに自分たちの作成したプランに対しての質疑応答もしていただきました。発表の準備期間は各班とも短かったはずですが、皆さんポイントを絞って時間内に説明されていました。発表後の質問と討議では、同じ製品を対象にした2つの班が相互に質問するケースもありました。例えば、製造工程フロー図には清浄度区分を記入しますが、ある班が「汚染作業区域」としたところを、もう一方の班は「準清浄作業区域」とされており、互いに、なぜそうしたのかを質問し合っていました。製品用の未使用段ボールは汚染されていないと考えたという意見や、外と繋がる部分は汚染区分と考えたという意見も出て、皆さん「なるほど」と思うような考え方を学ぶ機会になったのではないかと思います。
講師陣からは、危害要因リストでは、「危害は重要か」の問に 「Yes」 としたら、挙げた危害はいずれかの工程で必ずCCP管理するという原則や、病原微生物による危害は「汚染(つける)」 と 「増殖(増やす)」を区別して記入しないと、危害分析を「No」とするために講ずる対策が異なってしまうなどの意見を述べさせていただきました。そして私からはCCP後、包装前の「小分け」、「計量・包装」工程で、製品と人が接する機会がある工程は病原微生物の危害と共に「ノロウイルスの汚染」を危害として検討していただくとより良い危害分析になったのではないかと総括させていただきました。一般衛生管理で対応できる危害のためCCPにはなりませんが、「ノロウイルスの汚染」は昨今の食中毒発生状況からすると工場に戻られてからも意識していくべき重要課題だと思います。
この講習会は、令和8年度以降も開催される予定です。同業他社との貴重な交流の場としても、日々工場で実施している作業の意味や重要性を学ぶ良い機会になると思います。これからの食肉加工業界を担う人材の育成という面からも、多くの方々に参加していただければと思います。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
微生物試験検査課長 中川麻衣



