前回のコラム(#85)では、JASで使用できる食品添加物リストは、平成26年9月12日に食肉科研の業務規程に掲載したことをお話しました。
この食品添加物リストは、これまでに2回改定しています。今回は、2回の改定によって追加された食品添加物についてお話します。
調味料としての「グリシン」の追加
平成28年3月に、JAS認証事業者から、ベーコン類、ハム類、プレスハム及びソーセージ、熟成ハム類、熟成ソーセージ類及び熟成ベーコン類のJASに使用できる食品添加物として、「調味料」である「グリシン」を追加したいとの要望が提出されました。
「グリシン」は、それまで一部のJASで、保存料を使用しない場合に限り「日持向上剤」として使用できる食品添加物として掲げられていました。調味料に追加するご要望に対応するため、食品添加物リストの変更を検討するための技術委員会を設置し検討していただくこととなりました。「調味料」に「グリシン」を追加する場合、コラム#85で説明いたしましたように、CODEX一般規格3.2に照らして「食品衛生法で使用が認められているか、使用にメリットがあるか、使用により消費者に誤解を与えないか、すでに使用が認められている食品添加物で代替できないか等を十分に検討する」ことなります。特に慎重に検討したのは、「使用により消費者に誤解を与えないか」の点です。この点については、「日持向上剤」として「グリシン」を使用できる銘柄においては、保存料と日持向上剤を併用することを認める改定との誤解を避けるため、「保存料を使用しない場合に限る。」といたしました。その結果、委員のご了承が得られましたので、平成28年10月14日付で業務規程の食品添加物リストに追加し、農林水産大臣に届出しました。
「くん液」の追加
令和2年10月、ハム・ソーセージ類公正取引協議会は、「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約等の解説」に【別添1 用語等の解釈】を規定し、「くん煙」については次のように掲載しました。

このことによって、くん液によりくん煙風味及びくん煙色を付与することも「くん煙」工程であることが広く周知されました。
一方JASでは使用できる食品添加物リストに「くん液」が掲げられていない規格*があり、これらにおいては、「くん液」によるくん煙を行った場合、JASに格付することができません。特にくん煙」工程が必須であるベーコン類においては、製造工程に必要な食品添加物が掲げられていない状況でした。こうした状況を踏まえ、JAS認証事業者から、これらの規格の食品添加物に「くん液」を追加してJAS格付が可能となるようにしたいとの要望が提出されました。そのため、グリシン追加のときと同様に、技術委員会でCODEX一般規格3.2に照らして検討していただきました。
その結果、使用のメリットとして、スモーク色やスモーク風味にムラができにくく品質安定化に寄与する、食品ロス削減にも繋がる、環境への配慮に効果が期待できるなどと整理され、消費者への誤解の観点については、「くん液」を使用したときは当然のことながら食品添加物として「くん液」と表示することに加え、くん煙の解釈はハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約等の用語の解釈に含められており、これはハム・ソーセージ類公正取引協議会のホームページで公開されていて、誰もが知り得る情報であることから、誤解を与えるものではないと判断されました。
令和3年2月1日付ですべてのJASの食品添加物リストに「くん液」を追加し、業務規程の改定を農林水産大臣に届出しました。
JASを制定するときは、日本農林規格調査会において「日本農林規格の制定・見直しの基準」にしたがって審議されます。その基準には、「 JAS案の内容と同等の国際規格が存在する場合又はその策定が見込まれる場合であって、当該国際規格等との整合化について、適切な考慮が行われていること。」が含まれています。この点は、JAS制定だけでなく改正においても同様ですので、次回以降のハム・ソーセージ・ベーコンの規格改正においては、本調査会で国際整合性について検討した結果を報告することになります。しかし、お話してきましたように、食品添加物の追加については本調査会に諮ることなく、コーデックス3.2規格に照らして業界が判断する仕組みですので、JAS格付を向上させるために、追加要望等があればお寄せいただければと思います。
*:特級及び上級ベーコン、骨付きハム及びラックスハム、特級及び上級ハム類、熟成ハム類、熟成ベーコン類

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



