これまで何度かこのコラムでご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業を実施しています。以後多くの皆様にご参加いただき、2021(令和3)年度で6年目を迎えることができました。
今回は、2021(令和3)年度技能評価試験を終えて、過去5年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。

参加者数

2021(令和3)年度の参加者数は延べ561名で、過去最高となりました。過去5年間と比較すると、亜硝酸根以外全ての項目で増えています。特に大腸菌群は初年度の約2倍の参加者数となっています。

技能評価試験結果

《一般生菌数》

97%の参加者の報告値が管理限界線内*1にあり、良好な結果と評価されました。その割合は、昨年度(98%)よりはやや低いものの高い正答率となっています。
管理限界線を上回った参加者の検査工程記録書*2を精査すると、試料の希釈倍率を考慮しないで試験を行ったために正しく判定、算出できなかったことが原因と推察されました。また、結果の報告数不足(統計処理上3点が必須)や計算ミスも認められました。

《黄色ブドウ球菌》

93%の参加者の報告値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度(90%)より上昇しました。初年度の2016年度(47%)に比べると格段に検査担当者の技能が向上していると考えられました。菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが減少しています。一方で、毎回認められていることですが、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算されているケースがあります。

《E.coli》《大腸菌群》

陰陽性を正しく判定できた割合はE.coliは98%、大腸菌群は94%でした。どちらも昨年度(E.coli99%、大腸菌群96%)に比べ正答率はやや低くなりました。正しく判定できなかった原因は、陽性コロニーの見極めが不十分ではないかと推察されます。完全試験まで試験を進めずに、推定試験のみで判定した参加者が半数以上を占めていました。

《サルモネラ属菌》

陰陽性を正しく判定できた割合は98%と参加者のほとんどでした。昨年度(96%)よりも高い正答率でした。正しく判定できなかったケースは試料の取り違え、コンタミネーションが原因と推察されました。

《亜硝酸根》

Zスコア2以内かつR*3が管理限界線以内の参加者は87%で、昨年度(84%)より正答率は高くなりました。管理限界線を上回ったケースは、検査の操作性または標準溶液等の試薬や検量線の作成方法に原因があると推察されました。この場合、3点間のデータの“ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性が悪い等、検査の習熟度に原因があると考えられました。

2021(令和3)年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。過去最高だった昨年をさらに超える多くの方にご参加いただき、この事業がますます多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。もう一つの精度管理事業である検査技術実技研修会は、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大により2019(令和元)年度から開催できていません。調製済みのサンプルを自社で試験し、ご報告いただいた結果を統計的に解析する技能評価試験は、検査担当者の技能レベル確認、検査精度向上のための有効な手段と思います。この技能評価試験は年2回実施しております。今年度は第1回を無事終了し、8月に第2回の開催をご案内しました。皆様のご参加をお待ちしております。

*1:参加者全体の報告値の平均値の30%(下部限界線)以上及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割 合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘