2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対面での講習会が次々と中止となる中、演習が主目的の本講習会も、開催が難しくなっていました。
しかし、人材育成のため、開催を希望する会員・組合員の声があり、それにお応えするため、一般社団法人 日本食肉加工協会(以下「協会」)はオンラインでの開催を決定し、昨年度から実施しています。
当研究所は講師として協力させていただいておりまして、また、若手職員には研修として参加させていただいています。今回はその関わりの中で感じたことをお話したいと思います。
食肉製品における微生物管理の理解の重要性
この講習会は、従来から、演習目的の専攻編の前に、基礎編として「HACCPシステムの概要と食肉製品に係る危害分析及び微生物制御について」と題しまして麻布大学の森田幸雄先生がご講演されます。 基本的な衛生管理から、HACCPシステムの7原則12手順まで、食中毒情報を交えながらきめ細かな内容となっています。
残念なことに、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、先生がご講演される基礎編から、専攻編までに長い時間が空いてしまった受講者が大勢いらっしゃいます。そのため、専攻編では演習に入る前に、森田先生のご講演を一部振り返り、学ばれたことを思い起こしていただいています。
専攻編におけるHACCPモデルプラン作成演習の1つに「危害要因分析」があります。原料の受入れから出荷までの各工程でどのような危害があって、それを制御するために何が必要なのかを各班で検討していただきます。その際には、受講者の方々は、先生のご講演テキストを活用しながら議論されています。それを聞いていて感じることは、食肉加工品における衛生管理は、食肉に関わりの深い微生物への理解が重要である、ということです。「付けない」、「増やさない」、「排除する」といった基本的な食中毒防止策を講じるためには、まず相手を知る、ということではないでしょうか。
オンラインでのモデルプラン作成
受講者は各班4~5名に分かれていただき、班ごとに、ウインナーソーセージ、ロースハムについて「製造工程フロー図」を完成させ、「危害要因リスト」及び「HACCPプラン」を作成していただきます。この検討の時間はオンラインですので、もどかしいところもあるようです。対面であれば班のメンバーの何気ない一言がプラン作成のヒントになったり、ざっくばらんに自社ではこのように取り組んでいる、といった情報交換もしやすいのですが、パソコン画面を通じての議論ですと、遠慮して発言しにくい、ということも
あるようです。初対面、画面越し、加えてマスク着用という環境のため、困っているのか、意見に賛成しているのかがわかりにくい不便さは否めませんが、協会事務局が丁寧にそのサポートに回っておられることもあって、演習が進むに連れて、活発な議論が繰り広げられていくこともあります。
班のメンバー全員が1つのテーマについて意見を出し合っている内容がパソコン上の画面で即時に確認できる、というメリットもあります。「その工程に○○と加えたらどうでしょうか。」と発言があったら、書記担当が直ぐに入力してメンバー同士で画面共有されています。こうしたことは、受講者の方々のオンライン研修の経験のおかげかもしれません。
オンラインでのモデルプラン発表
最終日には、各班に、作成したプランを発表していただきます。対面に比べると、幾分緊張が少なく落ち着いて発表されているように見受けられます。発表の後には質疑の時間があります。 これから発表する班は、どこを説明しようかということで頭がいっぱいの状態でもあり、オンラインでは手が挙げにくいこともあるようです。そうしたこともあって、協会事務局は『1人1回は質問してくださいね』と呼び掛けています。
質問に答えられなくても、気にすることはありません。その場限りの曖昧な回答をすることの方が、演習の本筋から外れてしまうのですから。この演習はHACCPの考え方を学んでいただくことが目的です。考え方が間違っていることがあれば、我々から指摘させていただくことはありますが、例えば、その工程をCCPにしたから正解、ではないと考えています。なぜCCPにしたのか、CCPにしないのであれば、なぜしなかったのか、その工程では一般衛生管理として何をすべきか、そうしたことを考え、意見交換していただくことが大事なのではないでしょうか。
講習会は続きます。食肉科研は、今後もこの講習会に協力して、参加して良かったな、と思っていただけるよう努めてまいりたいと思っています。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



