2021年6月にHACCPによる食品衛生管理が完全施行になったことにより、食品製造現場では製造機械の洗浄や殺菌など、HACCPシステムを効果的に機能させるための前提条件である一般衛生管理が一層重要となっています。製造機械の衛生状態は、洗浄後の目視確認や定期的なふき取り検査により確認するのが一般的です。目視は即効性があるものの、人の見方によるバラつきがあり、ふき取り検査は結果が翌日以降となる欠点があります。今回は、これらの欠点を補うATPふき取り検査についてご紹介します。

測定の原理

ATP(アデノシン三リン酸)は、すべての生物が生体内のエネルギー伝達に利用する化学物質で、生命活動が行われているところ、動植物、微生物、食品残渣等あらゆる有機物に存在します。ATPは、酵素(ルシフェラーゼ)の存在下で、ホタルが持つ化合物(ルシフェリン)と反応することで発光が起きます。この発光量(RLU)を測定することで、汚染の指標として利用するATP量を測定します。

ATP測定により汚れを可視化する

製造機械を洗浄後、一見きれいに見えるところでも、ATP量を測定し高い値が出た場合、その機械には食品残渣、人の脂、微生物などが十分洗い流されずに残っていることを示しています。ATP測定によって汚れを可視化することができます。得られた値(RLU)は微生物数を表わしているわけではありません。

ATP測定のメリット

微生物や食品残渣等の有機物が持つATPを汚れの指標として測定することで、結果が約30秒で迅速にかつ、その場で確認できる特徴があります。また、検査には、専門的な知識や特別な技量を必要とせず、誰でも簡単に操作できることもメリットの1つです。

HACCPシステムでの活用

一般衛生管理において活用できます。機械器具の洗浄後の状況をその場で確認できるため、その後の迅速な対応が可能となり、特にアレルギー物質を含む食品を製造した後は、洗浄が不十分だとコンタミネーションが起きるので徹底的な洗浄が求められますから、その確認においても大いに役立ちます。また、作業従事者の手洗い後の衛生状況確認、作業者の違いによる機械器具洗浄状況の確認に活用することで衛生教育にも役立ちます。
汚れを数値化することで、最終的には機械器具全般を清潔に管理することや作業従事者の衛生に関する意識の向上が期待でき、クレームの削減にもつなげることができると思います。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 中島誠人