2021年9月、中国産冷凍塩蔵茎わさびに使われていた食塩に、日本では使用が許可されていないヨウ素が添加されていたことが判明し、これを原料とした加工食品を販売していた食品企業21社が商品の自主回収を行いました。ヨウ素(ヨウ化物)は日本では食品添加物として認められていませんので、国内で生産、販売される食用塩に添加すること、添加された食用塩を輸入することは禁止されています。
一方海外に目を向けると、ヨウ素(ヨード)が不足する国や地域では、ヨウ素欠乏症を防ぐために食用塩にヨウ素が添加されることがあります。中国は世界でもヨウ素欠乏症が最も深刻な国の一つだそうです。日本人はヨウ素を含む海藻類をよく食べるので、ヨウ素の摂取不足から起こる病気にかかる心配はないとされて
います。
☆リコール情報届出制度
2021年6月より、改正食品衛生法と改正食品表示法に基づき、食品等の自主回収(リコール)を行った場合、管轄の自治体へ届出することが義務化されています。
厚生労働省は、届出が義務付けられる自主回収は、次の場合(※)です。
・大腸菌による汚染や硬質異物の混入等(食品衛生法違反または違反のおそれ)
・アレルゲンや消費期限等の安全性に関係する表示の欠落や誤り(食品表示法違反)
※食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令等で定めるときを除きます。法律上の問題のない単なる商品の入れ間違いなどの情報は、行政が事故情報として把握・公表する理由 に乏しく、むしろ健康被害に結び付く情報を埋没させる懸念があることから届出の対象としていません。
リコール情報は、各自治体から報告された情報を一覧にし、厚生労働省の食品衛生申請等システムで公表されます。各社のヨウ素化塩による回収理由を見てみますと、「食品衛生法違反」と「食品衛生法違反のおそれがある」に分かれています。
回収の理由は届出を行う食品等事業者が記入しますが、届出内容はそれぞれの自治体が精査していますので、自治体によって判断が分かれているのかもしれません。
また、新制度では、届出された自主回収情報は健康被害発生の可能性を考慮し、都道府県等が届出の情報等を踏まえ、CLASS分類します。食品衛生法は3分類、食品表示法では2分類となっています。CLASS分類が不明な場合は、当面はⅡになります。
リコールサイトで公表されているヨウ素化塩の回収情報は、現在CLASSⅢに分類されています。

輸入食品監視指導結果からヨウ素化塩を見ると
厚生労働省が令和元年度に行った輸入食品等についての監視指導結果によれば、検査件数217,216件のうち、違反件数は763件(延べ800件)、これは届出件数の0.03%に相当します。その違反のうち、食品衛生法第12条違反(指定外添加物の使用)は53件、構成比は7.4%となっています。指定外添加物に係る違反の内容は、TBHQ(ターシャリーブチルヒドロキノン。酸化防止剤)25件(42.4%)、サイクラミン酸(甘味料)12件(20.3%)に続いて、ヨウ素化塩8件(13.6%)となっています。ヨウ素化塩違反の内訳は、インドの菓子類6件、イタリアのナチュラルチーズ1件、ブルガリアの塩類1件で、中国の違反事例はありませんでした。
輸入食品についてはその他に、検疫所が輸入前指導(輸入相談)を行っています。この時点で食品衛生法に適合しないことが判明した際には、輸入者に対し適切な対策を講じ、改善が図られるまで輸入を見合わせるよう指導されています。輸入相談におけるヨウ素化塩による違反状況は、中国の塩類の他、タイの調味料、菓子類及び種実類加工品、ドイツの加熱食肉製品、イタリアのその他の食品など複数の国及び食品に及んでいました。
塩の需給状況は?
我が国の塩の需給状況を調べてみたところ、日本の塩の輸入量は736万トン、自給率は約11%と、主な塩の生産国と比べてかなり低く、世界有数の塩の輸入国です。主な輸入先はオーストラリア311万トン、メキシコ278万トンです。
一方、日本の塩の消費量は年間約785万トンで、食用(家庭や飲食店で使われるものと、食品工業で使われるもの)として約79万トン、ソーダ工業用として約604万トン、融氷雪用、家畜用など、その他の用途として約101万トンが消費されています(令和2年度実績ベース)。食用はわずか1割にすぎません(2019年の財務省貿易統計より)。
今回のヨウ素化塩が使用された加工食品の自主回収については、法令順守は必要であるものの、食品ロスへの配慮という点から、最終製品にはほぼ残らないのであれば、自主回収の必要はないのでは?といった意見も聞かれました。しかし、未認可添加物を使った輸入食品を自主回収しないでよいという根拠は見当たりません。
一 部 、 公 益 財 団法人 塩事業センターのホームページ
(https://www.shiojigyo.com/siohyakka/number/number.html)より引用しました。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



