実施から4年を経過した技能評価試験について、前回(2021年5月号)では一般生菌数及び黄色ブドウ球菌試験に関して、皆さま方から寄せられたご意見や誤判定を防ぐポイントなどをご紹介しました。今回は大腸菌群、E.coli 及びサルモネラ属菌についてご紹介いたします。
大腸菌群試験及びE.coli試験
大腸菌群試験及びE.coli 試験に、食肉製品の公定法で示されているBGLB培地やEC発酵管培地を採用している施設では、誤判定はほぼありません。多くは発色酵素基質を利用した簡易培地を使用した場合に起きています。発色酵素基質は、大腸菌群が特異的に保有・産生する酵素β-ガラクトシダーゼ や E.coli が特異的に保有・産生する酵素 β-グルクロニダーゼ により基質が分解され、色素を生成し明瞭に鑑別する仕組みです。誤判定の大半は、発現したコロニーが取扱説明書に書かれている色より薄かった、コロニーの周りにガス産生が認められなかった、白色コロニーだったなどの理由で正しく判定されませんでした。菌数が多い場合は、コロニーが小さくなり、ガス産生能の確認は難しくなります。また、スキムミルク溶液試料の影響でコロニーが白っぽくなることもあると考えられます。この検査工程は、公定法に例えるなら、推定試験段階ですから、陽性が疑われるときはEMB 培地による確認試験、LB 培地及びグラム染色による完全試験に進み判定されることが望ましいです。
サルモネラ属菌試験
サルモネラ属菌試験に参加される施設数は他の項目より少ないですが、技能評価試験の実施回数を重ねるごとに正解率は高くなっています。誤判定の多くは陽性コロニーの見極めができていないことにあります。参加者の施設ではサルモネラ属菌が陽性となることはまずないと思いますので、陽性の経験が少ないとすれば、陽性が疑われるときは数種類の生化学的性状試験を行い正しく判定していただきたいと思います。ある施設では、生化学的性状試験の多くがサルモネラ属菌の性状を示しましたが、ONPG試験が黄色を呈したため陰性と誤判定しました。
食肉製品におけるサルモネラ属菌の公定法では、最初に緩衝ペプトン水などの非選択性の液体培地で増菌後、選択性のある液体培地で選択増菌培養を行い、選択分離培地による分離を行います。そこでサルモネラ属菌と疑われる集落が認められたときは、TSI寒天培地などにより確認培養を行って、定型的なサルモネラ属菌と判断されれば、サルモネラ属菌と確定します。非定型的サルモネラ属菌が疑われる場合に、生化学的性状試験を行いますが、その試験の1つにONPG試験があります。ONPG試験は、ONPGディスクを使って液色で判定する試験ですが、液色が黄色となったものをONPG陽性とします。サルモネラ属菌はONPG陰性です。
生化学性的状試験は、ONPG試験以外に、オキシダーゼ試験、クエン酸利用能試験、VP
試験、マロン酸利用能試験がありますから、サルモネラ属菌陽性が疑われるときは、ONPG
試験だけでなく、これらを組み合わせて確認する慎重さをもって技能評価試験に臨んで
いただければ、日頃サルモネラ属菌陽性試料を観察することが少ない施設でも判定でき
ると思います。
技能試験全般で共通していることは、少数ではあるものの、結果報告書への転記ミスです。試験では正しく判定しているのに、陽性、陰性を逆に報告している、菌数測定試験では、1桁多く又は少なく報告しているなどです。結果報告書作成時に複数名で確認されれば防げると思います。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 中島誠人



