ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約では、客観的根拠に基づかない「特級」、「特選」、「最高級」、「熟成」等の用語は禁止されています。そのうち、「特選」、「厳選」の用語については、「農林水産省から特別表示基準として示されている基準に合致しないものは表示できない」とされています。
さて、「特別表示基準」、皆さんご存じですか?

ハム・ソーセージ類の特別表示基準

「特別表示基準」の誕生は、約30年前にさかのぼります。
平成の時代に入り、当時、ハム類、ベーコン類、ソーセージ類の表示について「厳選」、「熟成」等の表示が付された製品が出回り、これらの表示の根拠が不明確のまま表示されている事例が多くみられました。そのため、日本食肉加工協会(以下「協会」という。)は学識経験者等とともに、特別表示の自主基準として「ハム・ソーセージ類の特別表示基準」を作成しました。
農林水産省は、それがハム類等の特別表示の適正化に資するものであるとして、平成4年11月18日、農林水産省食品流通局消費経済課長名で「ハム・ソーセージ類の特別表示基準」を通知しました。
特別表示基準で規定された用語は2つ、「厳選」(「厳撰」、「特選」、「特撰」を含む。)と「熟成」です。
「厳選」等と表示できるのは、『JASの特級品質基準を満たすもの』とされました。平成4年当時はベーコンに等級区分がなかったので、特級規格のあるハム類、ソーセージ類だけが対象でした。その後平成26年にベーコンに特級が制定され、ベーコンも特級の基準を満たせば「厳選」等の表示ができるようになりました。特別表示基準における「熟成」の用語は、次の基準を満たすものとされました。

皆様お気づきのように、この特別表示基準が熟成JASの基礎になっています。
平成7年12月に熟成ハム類、熟成ソーセージ類及び熟成ベーコン類JASが制定されましたので、特別表示基準の「熟成」はその役割を終えました。
特別表示基準で「上級」とされていた品質基準が熟成JASでは「特級」にランクアップしたことについて農林水産省は、熟成JASは「特別な生産方法」のJAS(当時は「作り方JAS」と言われました。)に位置付けられ、特別な生産方法である熟成工程をとった場合に、熟成風味が作り出され、そのことにより風味に係る食品添加物等を省くことができる等品質面での向上がもたらされ、結果として現行ハム類のJAS特級の基準を満たすこととなった、と説明しています。

ハム・ソーセージ類における「厳選」等の表示実施要領

特別表示基準に適合するかどうかについては、課長通知に「基準に適合するかどうかは日本食肉加工協会が指導する。」と示されています。協会はそれを受け、「「ハム・ソーセージ類の特別表示基準」に基づく「厳選」等の表示実施要領」を定めました。
実施要領では、協会に検査の申請を行い(当時は協会が検査を行っていました。)、検査の結果JAS特級の基準に適合していれば「厳選」等を表示できる、ただし、JAS特級に格付したものは検査を受けなくてよい、とされました。これは、特級に格付した製品はJAS格付検査によってその品質基準を満たしていることが確認されているためです。
検査を受ける際の表示の有効期間は2週間とし、継続して「厳選」等を表示したい場合は新たに検査を受ける、とされました。その後平成16年3月に食肉科研が設立され、協会の検査部門が食肉科研に移行し
ましたので、「厳選」等の品質検査も食肉科研が行うこととなりました。現在も表示の申請があれば検査を実施しています。「熟成」の用語を表示する場合も表示実施要領にしたがって検査を受けてJAS上級の品質基準に適合することが要件とされましたが、熟成JASが制定されてからは、検査の仕組みはなくなりました。

このように、「特選」、「厳選」の用語を表示する場合には、農林水産省課長通知による「ハム・ソーセージ類の特別表示基準」に基づき、協会が定めた実施要領にしたがって食肉科研の検査を受け、特級に適合していることが要件となっています。ただし、JAS特級に格付していれば検査の必要がないことは変わりがありません。
ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約が公正取引委員会の認定を受けたのは平成4年9月です。ですから、「厳選」等の表示のルールは、ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約とともにスタートして、今に至っている、と言えます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美