このコラムでこれまで何度かご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業をスタートしました。以後多くの皆様にご参加いただき、2020(令和2)年度で5年目を迎えることができました。
今回は、2020(令和2)年度技能評価試験を終えて、過去4年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。
参加者数
2020(令和2)年度の参加者数は延べ557名で、過去最高となりました。大腸菌群をはじめサルモネラ属菌、亜硝酸根は昨年より10名ほど多くご参加いただきました。過去4年間の平均参加者数と比較すると、全ての項目で増えていますが、特に大腸菌群、一般生菌数は20~30%増となっています。

技能評価試験結果
《一般生菌数》 98%の参加者の値が管理限界線内*1にあり、良好な結果と評価されました。その割合は、年々向上しています。管理限界線を上回った参加者の検査工程記録書*2を精査すると、試料の希釈倍率を考慮しないで試験を行ったために正しく判定、算出できなかったことが原因と推察されました。
《黄色ブドウ球菌》
90%の参加者の値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度(98%)より低下しました。微生物では唯一昨年度より正答率が低下しましたが、初年度(47%)に比べますと大幅に向上しています。菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが減少したことがその要因の1つです。しかし、管理限界線を外れたケースについて検査工程記録書を精査すると、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算されており、これは毎年度認められる傾向です。
《E.coli》《大腸菌群》
陰陽性を正しく判定できた割合はE.coliは99%、大腸菌群は96%でした。どちらも昨年度正答率はやや高くなりました。正しく判定できなかった原因は、陽性コロニーの見極めが不十分ではないかと推察されたケースがありました。
《サルモネラ属菌》
陰陽性を正しく判定できた割合は99%と参加者のほとんどでした。昨年度(96%)よりも高い正答率でした。
正しく判定できなかった原因は推定できませんでした。
《亜硝酸根》
Zスコア2以内かつR*3が管理限界線以内の参加者は84%で昨年度(89%)より正答率は低くなりました。ほぼ毎年度認められる濃度単位をppmからg/kgへ変換できない参加者が2名おり、データ・クリーニングにおいて除外されました。管理限界線を上回ったケースは、検査の操作性または標準溶液等の試薬や検量線の作成方法に原因があると推察されました。Rが管理限界線を上回った参加者は3点間のデータの“ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性が悪い等、検査の習熟度に原因があると考えられました。
2020(令和2)年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。過去最高だった一昨年をさらに超える多くの方にご参加いただき、この事業がますます多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。もう一つの精度管理事業である検査技術実技研修会は新型コロナウイルス感染拡大により一昨年度から開催できておらず、ワクチン接種の効果が発揮されるまで実施できないのではないかと懸念しています。
調製済みのサンプルを自社で試験し、ご報告いただいた結果を統計的に解析する技能評価試験は、検査担当者の技能レベル確認、検査精度向上のための有効な手段と思います。この技能評価試験は年2回実施しており、今月第2回の開催をご案内したところです。申し込みの締め切りは9月24日です。ご参加をお待ちしております。
*1:参加者全体の平均値の30%(下部限界線)及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘



