このコラムでもたびたびご紹介していますが、食肉科研では、平成28年から食品製造施設における検査担当者の技能レベル確認及び試験検査室の検査精度向上を目的として、当研究所で調製した試験試料を配付し、得られた結果を統計的に解析する技能評価試験を実施しています。実施から4年が経過し、これまで微生物試験に関して皆さま方から寄せられたご意見や誤判定を防ぐポイントなどをご紹介いたします。
検査結果に影響を及ぼす要因
検査結果に影響を及ぼす要因として、まず培地の状態があげられます。固化した粉末培地や使用期限切れ培地の使用、溶解するときの過加熱、作り置きした培地の再加熱などによる不適切な使用です。手技の要因としては、陽性コロニーの見落とし、計算の間違い、試料液希釈時のバラツキなどが考えられます。
一般生菌数
技能評価試験を始めた当初は、すべての施設が検査法として、食品衛生検査指針に準じた混釈平板培養法を採用されていましたが、最近は4割弱の施設で簡易培地(ペトリフィルムなど)が使用されるようになり、性能が確保された使いやすい培地が普及していると実感しています。
一般生菌数は日頃から検査される機会が多いと思われますので、外れ値が一番少ない項目です。誤判定が見られるケースは、発現したコロニー数に正しく希釈倍率を乗じていない、いわゆる計算間違いです。希釈を何段階行ったかを間違いなく乗じることが必要です。
計算例を紹介しますと、試料25gに希釈水225ml加えてストマッカー処理した場合、試料原液は10倍希釈液となります。この希釈段階で30~300個のコロニーが発現したら、コロニー数に10を乗じて1当たりの菌数を算出します。必要に応じて100倍、1,000倍と希釈段階を増やしその倍数を乗じます。

標準寒天培地を重層した方が良いのか、また、重層した場合菌数は変わるのかとの質問をいただきます。食肉科研が試料に添加している菌液は枯草菌芽胞液なので、重層してもしなくても菌数に差が生じることはないと考えています。唐揚げ製品などの衣が付いた製品はバチルス属などの芽胞菌が多く出現するので、重層することでコロニーの拡散を防ぐことができ、正確にカウントできます。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌試験での誤判定は、正しく希釈倍率を乗じていない計算間違いが大半です。公定法に準じた試験法では、0.1mlの試験液を平板培地(ベアードパーカー培地、卵黄加マンニット食塩培地など)に塗抹し、培養後発現したコロニー数をカウントします。一般生菌数試験と同様、試料25gに希釈水225ml加えてストマッカー処理した場合、試料原液は10倍希釈液となります。ただし、0.1mlを添加し塗抹するので100倍数を乗ずることになります。ペトリフィルムなどの簡易培地では、培地に接種する液量に応じて乗ずる値も変わります。また、ペトリフィルムでは現れたコロニーが黄色ブドウ球菌かどうかを確定させるために、専用のディスクを挿入して識別します。これは、黄色ブドウ球菌が産出するデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を指示薬と反応させてピンクゾーンを形成させる仕組みです。通常食品から黄色ブドウ球菌が検出されることが少ないため見極めが難しいようです。必要があればメーカーに問い合わせるなりして、経験を積んでいただきたいと思います。
次回は大腸菌群、E.coli及びサルモネラ属菌についてご紹介いたします。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 中島誠人



