2020年5月号のコラムでは、JRA補助事業(2019年度~2020年度)として、輸入及び国産豚肉の肉質の違いを客観的、科学的に明らかにするために、両者の比較試験を実施中であること、当事業の目的、調査対象国、分析項目など、調査の概要を紹介しました。本事業では、豚ロース肉についておいしさの要因とされる「味」「食感」「香り」の3つの観点から、理化学的成分分析、生物・物理的性状分析、官能検査を軸に両者を調査していますので、今回は、2019年度の比較試験結果(中間報告)のうち、基礎成分及び生物・物理的性状試験結果を紹介いたします。
なお、2019年度の試料数は、輸入品が6か国18試料、国産品が12試料(銘柄豚6試料、三元豚6試料)です。結果は両者の平均値を算出して比較しました。

(1)基礎栄養成分

水分、たんぱく質、脂肪などの基礎成分、カルシウム、鉄などのミネラル類、ビタミンB群やEなどのビタミン類については、表1に示す項目に有意差が認められました。

脂肪は、国産(銘柄豚>三元豚)>輸入豚の順で含量が多く、国産は輸入に比べて芯内の脂肪含量が多い結果でした。両者のロース断面を比較すると、国産は輸入に比べて芯内の脂肪交雑が強かったことから、含量の違いはサシの強さによるものと推定されました。国産はサシをより多くするために、エコフィードなど低たんぱく質飼料を給餌している可能性があると考えられました。

ミネラル類は、生体内で合成されない無機元素を言い、その摂取所要量は少ないものの、生命に不可欠な微量栄養素として重要であるとされています。また、これらは体内で作ることができないため、食物から摂取する必要がある栄養素です。鉄及び亜鉛について、国産は輸入に比べてその含量が多い結果でした。鉄は、国産(銘柄豚>三元豚)>輸入豚の順でその含量が多く、これは国産豚に給餌されるエコフィードなど特徴ある餌によるものが一因と考えられました。亜鉛は、国産(三元豚>銘柄豚)>輸入豚の順でその含量が多い結果でした。亜鉛は、大豆などの豆類に豊富に含まれます。海外では飼料にトウモロコシが主に使用されるので、餌の違いによるものと考えられました。
一方、カルシウム及びカリウムは、国産は輸入に比べてその含量が少ない結果でした。海外の水にはカルシウム等が豊富な硬水もあるので、飼養時に与える水の影響が考えられました。

(2)生物・物理的性状

pH、色調(脂肪部・赤肉部)、ロース芯断面積、テクスチャー(硬さ・凝集性・弾力性・咀嚼性)、保水性、加熱損失率等については、表2に示す項目に有意差が認められました。

背脂肪の色調(脂肪色)は、国産は輸入に比べて黄色みが弱く明るい白色を有しているが、輸入の脂肪色は国産に比べ黄色みが強い結果でした。脂肪の色素は給餌飼料に影響されやすく、海外では飼料にカロテノイドを多く含むトウモロコシ等を給餌することから、輸入の脂肪色の黄色みの強さは、飼料の影響によるものと推定されました。赤肉の色調は、国産は輸入に比べ赤みが強く現れました。食感については、テクスチャーの結果から、国産は輸入に比べて軟らかく咀嚼されやすくジューシーさが強い結果となりました。軟らかく咀嚼されやすい食感は、ロース芯内の脂肪含量及び脂肪交雑の強さによるものと推定されました。

次回は、遊離アミノ酸等のうま味に関連する成分、脂肪の融点や脂肪酸等の脂肪の質に関連する成分の結果や官能検査との相関についてお話ししたいと思います。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部理化学部 吉田由香