このコラムでこれまで何度かご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業をスタートしました。以後多くの皆様にご参加いただき、2019(令和元)年度で4年目を迎えることができました。今回は、2019(令和元)年度技能評価試験を終えて、過去3年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。

参加者数

2019(令和元)年度の参加者数は延べ512名で、過去最高となりました。大腸菌群をはじめ一般生菌数、黄色ブドウ球菌は昨年より10名ほど多くご参加いただきました。過去3年間の平均参加者数と比較すると、全ての項目で増えていますが、特に大腸菌群、一般生菌数は大幅に増えています。

技能評価試験結果

《一般生菌数》 97%の参加者の値が管理限界線内*1にあり、良好な結果と評価されました。その割合は、昨年度と変わりがありませんでした。管理限界線を上回った参加者の検査工程記録書*2を精査すると、試料の希釈倍率を考慮しないで試験を行ったために正しく判定、算出できなかったことが原因ではないかと推察されました。

《黄色ブドウ球菌》
97%の参加者の値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度(89%)より向上しました。初年度(47%)に比べると格段に検査担当者の技能が向上していると考えられました。菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが減少したことがその要因の1つです。管理限界線を上回ったケースについて検査工程記録書を精査すると、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算されていました。

《E.coli》《大腸菌群》
E.coliは陰陽性を正しく判定できた割合は95%で、昨年度(98%)よりも若干低い正答率でした。
大腸菌群は陰陽性を正しく判定できた割合は94%で、昨年度と変わりありませんでした。正しく判定できなかった原因は、陽性コロニーの見極めが不十分ではないかと推察されたケースがありました。

《サルモネラ属菌》
陰陽性を正しく判定できた割合は96%で、昨年度と変わりありませんでした。正しく判定できなかった参加者は単純な記入ミスであったり、試料採取時の取り違え、または判定ミスが原因と推察されたケースがありました。

《亜硝酸根》
89%の参加者がZスコア2以内かつR*3が管理限界線以内で昨年度(83%)よりも高い正答率でした。これまで毎年度認められた濃度単位をppmからg/kgへ変換できない参加者はおらず、データ・クリーニングにおいて除外された参加者もいませんでした。この点は、検査担当者の検査結果の処理についての理解が向上していると考えられました。管理限界線を上回ったケースは、検査の操作性(特に反応させる液の量)または標準溶液等の試薬や検量線の作成方法に原因があると推察されました。Rが管理限界線を上回った参加者は3点間のデータの“ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性が悪い等、検査の習熟度に原因があると考えられました。

2019年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。過去最高の参加数となり、この事業が多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。一方、今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、もう一つの柱である検査技術実技研修会は、人と接することが必須であるため、開催できておりません。このコロナ禍の中で、調製済みのサンプルを自社で試験し、その結果をご報告いただくことによって技能評価できる試験は、検査担当者の技能レベル確認、検査精度向上のための有効な手段と思います。引き続き、ご活用いただきますようお願いいたします。

*1:参加者全体の平均値の30%(下部限界線)及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘