新型コロナウイルス感染症拡大により、皆様方の施設でもご苦労が多い日々が続いていることとお察しいたします。当研究所においても「三密」を避け、ソーシャルディスタンスを守り、手洗いを徹底するなど感染対策を続けているところです。
さて、食肉加工業界では、手洗いの励行は従来から日常のものとして行われてきました。今回のコラムでは、特に包装作業において多く使用されている『使い捨て手袋』について、改めて使用する目的や着脱のポイント、交換の目安等を考えてみたいと思います。

使用の目的

食中毒予防の3原則の1つである「つけない」は、食品衛生における全ての基本です。ノロウイルスによる食中毒のほとんどが食品取り扱い者の手指からノロウイルスを食品に「つけた」ために発生しています。『使い捨て手袋』は、「つけない」ために使用します。

『使い捨て手袋を使っているから大丈夫!』という油断は禁物

言うまでもないことですが、『使い捨て手袋』を着ける前には、しっかり手洗いをすることが大事です。汚れた指で『使い捨て手袋』を取り出すと、手袋の表面にノロウイルスや黄色ブドウ球菌が付着してしまいます。
このコラムの#11でご紹介しましたが、平成26年1月に浜松市で学校給食として提供した食パンを喫食したことによるノロウイルス食中毒が発生し、患者数は1,200人以上に昇りました。その施設の作業従事者は、スライス後の食パンを1枚ずつ手に取り、異物が付いていないかを検品していました。専用の作業着(上下)、帽子、マスク、『使い捨て手袋』を着用していましたが、トイレ使用後に十分な時間をかけて手洗いを行わなかったために、ノロウイルスが手又は作業着(下)に残存してしまい、そこから『使い捨て手袋』に移行してしまったことが原因の1つに考えられました。(この事故は他にも従業員の健康管理などいくつかの原因が推定されています。)
このことから、手洗いの重要性はもちろん、『使い捨て手袋』を容器から取り出すときも、手袋の指先など食品が直接触れる部分をつかんで手袋表面を汚染することのないように意識することが大切ということがわかります。
『使い捨て手袋』を外すときも、手袋に付いている(かもしれない)ノロウイルス等を飛散させないために、手袋の袖口をつかみ、外側が内側になるように裏返しながら、片方ずつ外します。歩きながら外すことのないように心掛けましょう。(図1挿入)
前述の食パンを提供した施設では、『使い捨て手袋』の交換について指示があったのは、トイレ使用前後のみであり、それ以外の交換のタイミングについては個人の判断に委ねられていました。そうしたことも大規模食中毒発生の原因とされています。
『使い捨て手袋』交換のタイミングは一律には言えませんが、長い時間装着していると『使い捨て手袋』の内側の湿度が高くなり、時間経過とともに手指の黄色ブドウ球菌が増えてしまいます。「「大量調理施設衛生管理マニュアル」の改正について」(平成29年6月16日付厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長通知)に、交換のタイミングが示されているので参考になります。他にも、ゴミ箱やダンボール、顔に触ったときなども交換のタイミングに挙げられます。

手洗い後にアルコールを噴霧することがあると思いますが、アルコールがなかなか乾かないからといって作業着等で拭いたりしないよう意識しましょう。ちなみに、手指へのアルコールの使用にあたっては、15秒以内には乾燥しない程度の十分な量を使用し、アルコールが完全に乾燥するまで両手を擦り合わせることが効果を高めることになります。しっかり手洗いをして、『使い捨て手袋』を有効に使って、これからのシーズン、食中毒事故を防ぎましょう。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美