本コラム#36(平成30年7月号)で、「5S活動について思うこと」と題して、HACCPの制度化を見据えると、一般衛生管理の基本となる『5S』がますます重要になるのではないかとお話しさせていただきました。今回は、過去の食中毒事例から一般衛生管理を考えてみたいと思います。
焼肉店における腸管出血性大腸菌O157集団食中毒事例
2015年6月、東京都でバイキング形式による焼肉店での食事を原因とする腸管出血性大腸菌食中毒が発生しました。患者は17名で、当該焼肉店の調理従事者12名のうち1名(食肉担当)の検便からO157が検出されました。患者及び調理従事者由来のO157菌株計12検体は、パルスフィールド・ゲル電気泳動型及び薬剤耐性パターンが一致しました。
感染経路について、施設のふき取り検体や残っていた食品から同菌は検出されず、原因の特定には至りませんでしたが、推定される感染経路として次の点が考えられました。

他にも、バイキングの際に使用する専用のトングを誤った方法で使用する客がいたことなども明らかになっていますが、この事故から学ぶべきことの1つは、『従業員の適切な手洗い教育』の重要性だと思います。
なぜ野菜等を洗うシンクで手洗いをしてはいけないのかが理解されていれば(日常的にシンクで手洗いをしていたかどうかは不明)、トイレから出た後どのようにして手を洗うのかのルールが徹底されていれば、この事故は防げたかもしれません。
もう1つは、『従業員の健康管理』です。腸内に腸管出血性大腸菌がいたとしても発症しない場合があり、厚生労働省ホームページの腸管出血性大腸菌Q&Aでは、次のように示されています。

過去の食品事故を踏まえると、「無症状病原体保有者」がいることを前提とした『適切な手洗いの実行』がいかに大事かを改めて考えさせられます。また、トイレの清掃についても、汚染を広げない、清掃者自身が汚染しないような清掃方法が求められます。このことはノロウイルスの感染を防ぐことにもつながります。
1月に開催された「HACCPシステムに基づく衛生管理講習会」(主催:一般社団法人日本食肉加工協会)でもお話させていただきましたが、食中毒事故の原因の多くは一般衛生管理に何らかの問題があったという現状を踏まえ、5Sを土台とした一般管理を確実に実施して、食中毒事故を防ぎましょう。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



