携帯電話の85%以上(2019年2月MRC調べ)を占めるスマートフォン(以下、「スマホ」と略す)。今や誰もが持っている日用品になりつつあるスマホの汚れに潜む食中毒の危険性について、食品衛生研究2019年8月号に掲載されていました(京都市医療衛生センター中部方面担当、栁澤佑加子先生ら)ので、一部を紹介いたします。
調査結果
①スマホの使用実態調査
京都市内飲食店関係者、学生、主婦等772名を対象とした調査の結果、男女比は半々で、年齢は10代、20代を中心に10~90代まで幅広い年齢層から回答を得た。スマホのトイレ及び台所への持ち込みの有無は、トイレには約60%、台所には約30%が持ち込むと回答していた。トイレに持ち込んだ人の半数が、トイレットペーパーフォルダの上面にスマホを置くと回答した。台所での使用目的は、調理方法の確認や出来上がりをSNSに投稿するためとの意見が多かった。
②スマホの細菌検査
フードスタンプによる71台のスマホの一般生菌の比較では、スマホの表面(液晶画面)より裏面の方に細菌が多く付着する傾向が見られた。黄色ブドウ球菌は表面から33%、裏面から61%認められた。割合は低いが、E.coli、大腸菌群、セレウス菌も検出された。
③トイレ利用時のスマホ置き場の細菌検査
スマホ置き場として利用する、15箇所のトイレットペーパーフォルダの上面をフードスタンプで測定したところ、一般生菌が100個以上の重度汚染が67%、黄色ブドウ球菌が85%、セレウス菌が40%に認められた。
④スマホを介した汚染の移行調査
トイレットペーパーフォルダの上面に置く前と置いた後をATPで測定(n=3)したところ、スマホ裏面では、置く前は263RLUに対し、置いた後は3,300RLUと、3,037RLUが移行した結果となった。ちなみに、手指の管理基準値は、3,300RLUを超えると不合格と判定されている。また、蛍光塗料を塗布したスマホを操作した後、まな板の食材を包丁で切り、盛付けした食材をブラックライトにより確認したところ、蛍光塗料は食材のほか、まな板、包丁にも移行することが確認された。
⑤スマホ汚染の除去方法
汚染除去方法としては、5.50%エタノール含量除去クリーナー、電解質(カリウム電解イオン水)+界面活性剤含量除去クリーナー、界面活性剤含量除去クリーナー、不織布、ティッシュでスマホの液晶画面の汚染を除去する前後におけるATP測定をしたところ、除去率約90%の50%エタノール含量除去クリーナーに高い除去効果が認められた。
まとめ
今回の研究結果から、スマホをトイレに持ち込まないことが最善の対策とされています。会員の皆様の施設では、食品に直接触れる作業者は施設内にスマホや時計などの私物を持ち込むこと自体が禁止されていると思いますので、スマホの汚れを食品に移行させる心配はないかもしれません。 一方で、管理責任者などが施設内の通信手段としてスマホを含む携帯電話等を使うことがあると思いますが、その場合には、使用後にそのままの状態で製造機器類に触れないこと、手指の洗浄を十分に行うこと、スマホの液晶画面は市販の除菌クリーナーなどで除菌するなどのルールを決めておくことで、汚染の移行を防げます。特に加熱後の製品を扱う包装室へのスマホの持ち込みは適切に管理しなければ、と思わせる報告でした。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 中島誠人



