食肉科研では、様々な観点から食肉の肉質評価を実施しています。今回は、『保存温度の違いにより豚肉の肉質にどのような差が生じるか』について比較試験した結果をご紹介します。
試験品情報及び検査項目
試験部位はロース部位とし、同一品種で同日にアメリカでと畜した5頭としました。と畜後、左右に分割し真空包装した後、ロース左側を冷凍保存(-20℃以下)、右側を冷蔵保存(2℃以下)して、日本に輸送されました(と畜日から35日経過)。冷凍保存試料(以下「フローズン品」)5試料及び冷蔵保存試料(以下「チルド品」)5試料は、4℃冷蔵庫で24時間保存後、同時期に試験に着手しました。
肉質評価項目として、(1)成分検査(水分、たん白質、脂肪、遊離アミノ酸18種含量、遊離ペプチド総量等)、(2)物理化学的検査(テクスチャー、加熱損失率等)、(3)官能検査(訓練された3名の官能検査員が実食し評価)を実施しました。
試験結果
各検査項目の評価は、官能検査を除いてフローズン品及びチルド品各5試料の平均値を算出し、フローズン品の値を100とした場合のチルド品の値を相対値として比較しました。
(1)成分検査(抜粋 表1参照)
基礎成分(水分、タンパク質、脂質)の含量は、両者にほとんど差はなく、当試験の保存温度帯による違いは認められませんでした。
一方、味の強さの指標となる呈味成分の違いは、チルド品はフローズン品に比べて、旨味アミノ酸は3.7倍、甘味アミノ酸は約1.7倍、風味や味の強さに関与する遊離アミノ酸総量は2.5倍、コクやまろやかさに関与する遊離ペプチド総量は1.5倍高い結果となりました。

(2)物理化学的検査(抜粋 表2参照)
食感の指標となるテクスチャーで比較すると、チルド品はフローズン品に比べて、やわらかく、容易に咀嚼でき、ジューシーであることが示唆されました。

(3)官能検査(図1参照)
食感(やわらかさ、多汁性、弾力性、脂肪の口溶け)・香り(豚肉の良い香り)・味(旨味、甘味)・総合評価(バランス)を表す品質特性8項目について、フローズン品を0点とした時のチルド品を-2点から+2点の5段階の採点法で評価したところ(1対比較を5回実施)、チルド品は、8つの品質特定全てにおいてプラスの評価を得ました。中でもやわらかさ、多汁性、豚肉の香り、旨味総合評価(バランス)は、チルド品の方が「はっきり良い」「はっきり強い」と評価され、フローズン品との差は明らかでした。

まとめ
保存温度の違いによる今回の肉質評価結果では、チルド品はフローズン品に比べて、成分検査では、遊離アミノ酸、ペプチド含量等呈味に、物理化学的検査では、食感を表す軟らかさ、ジューシーさを表す加熱損失率に、食味検査では、やわらかさ、多汁性、香り、旨味、総合評価において優位性を示しました。その要因として、チルド品は、輸送中に熟成が進むため、適度な軟らかさ、食味性(味と香り)の向上がもたらされ、開封時のドリップがほとんど生じないのに対し、フローズン品は熟成が進まないため筋線維が軟化しないことや、解凍時のドリップの流出が大きいことが考えられました。(今回の試験では、フローズン品の凍結温度やスピード等の情報は入手できなかったため、それらが肉質に与える影響は不明)

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部理化学部 吉田由香



