このコラムで過去に何度かご紹介していますが、当研究所は平成28年度から自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、自社の検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業を始め、多くの皆様にご参加いただき、平成30年度で3年目を迎えることができました。
今回は、平成30年度技能評価試験を終えて、過去2年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。
参加者数
平成30年度の参加者数は下記の通り、延べ484名で、昨年度よりは少ないものの、スタート時に比べますと100名以上多くの参加をいただきました。試験項目別では、黄色ブドウ球菌の参加者が昨年より10名少なくなりましたが、その他の試験項目では大きな増減はありませんでした。

技能評価試験結果
《一般生菌数》
96%の参加者の値が管理限界線内*1にあり、良好な結果と評価されました。その割合は、昨年度と変わりがありませんでした。管理限界線を上回った参加者について検査工程記録書*2を精査すると、試料の希釈倍率を考慮しないで算出したことが原因ではないかと推察されました。
《黄色ブドウ球菌》
89%の参加者の値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度と変わりがなく、初年度(47%)に比べるとかなり良好な結果でした。初年度に見られた、菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが減少していますので、検査担当者の技能が向上していると考えられました。管理限界線を上回ったケースについて検査工程記録書を精査すると、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算している参加者が散見されました。
《E.coli》
陰陽性を正しく判定できた割合は98%で、29年度よりも若干高く、また、全ての試験項目の中で最も高い正答率でした。
《大腸菌群》
陰陽性を正しく判定できた割合は94%で、昨年度よりも高くなりました。未知試料を検査する場合、希釈することが一般的ですが、正しく判定できなかった検査工程記録書を精査すると、適正に希釈せずに培地に接種したために、コロニーが定型的性状を示さなかったのではないかと推察されたケースがありました。
《サルモネラ属菌》
陰陽性を正しく判定できた割合は96%で、昨年度よりも若干高くなりました。正しく判定できなかった検査工程記録書から、試料採取時の取り違え、記入ミス、または判定ミスが原因と推察されたケースがありました。
《亜硝酸根》
83%の参加者がZスコア2以内かつR*3が管理限界線以内でした。データ・クリーニングにおいて除外された参加者の検査工程記録書を確認すると、濃度単位がppmからg/kgへ変換されていない参加者が認められました。また、管理限界線を上回ったケースは、検査の操作性または標準溶液等の試薬や検量線の作成方法に原因があると推察されました。Rが管理限界線を上回った参加者は3点間のデータの“ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられました。
平成最後の精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。当初、食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に始めた事業ですが、現在はその他の食品を検査している企業の参加も増えてきました。参加者は昨年度よりもやや減少しましたが、今年度から参加費の負担額が増えたことを考えると、この事業が多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。
今年度も6月と10月に実施を予定しています。精度管理は1回で終わるのではなく継続することが大切とされています。今後とも、日常の品質管理における検査担当者の技能レベル確認、自らの試験室の検査精度向上のため、本事業をご活用いただきますようお願いいたします。
最後に、計算ミスがありますと、せっかく正しい結果が得られているのに大変“もったいない”と思います。どうぞ十分ご確認の上、検査結果をご回答いただくよう、お願いいたします。
*1:参加者全体の平均値の30%(下部限界線)及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘



