一般社団法人 食肉科学技術研究所は、一般社団法人 日本食肉加工協会(以下「協会」という。)の検査・研究部門が分離独立し、2004(平成16)年3月1日に設立されました。今年の3月1日で15年目を迎えます。
無事にこの日を迎えることができましたのも、会員・組合員の皆様のご支援、ご協力の賜物と感謝申し上げます。協会、日本ハム・ソーセージ工業協同組合の長い歴史に比べればわずかな年月ではありますが、この機会に設立当初を振り返ってみたいと思います。


この試験を機に、腸内細菌科菌群の検査法を開発しました。また、非加熱食肉製品の規格基準に国際規格で定めるリステリアの基準を採用することが厚生労働省で検討され始めましたので、2013(平成25)年にはリステリア制御検討委員会を設置して、専門家の助言を受けながら、企業4社及び食肉科研で非加熱食肉製品のリステリア制御に関する共同試験を開始しました(後に共同で日本食品科学工学会誌に発表)。共同試験は、それぞれの施設で同一条件の下に生ハムを製造し、リステリア・モノサイトゲネスの増殖に関与する水分活性及び保存温度と3つの制御要因(乳酸ナトリウム、ナイシン、くん煙)を探るものでした。競合する企業が共同で取り組んだ成果を論文にまとめたことは特筆すべきことと思います。また、このときの経験は食肉科研の財産になりました。

設立の経緯

2003(平成15)年5月30日付で食品衛生法が改正され、厚生労働大臣が指定する指定検査機関が登録検査機関と改称されるとともに、従来は財団法人や社団法人などの公益法人が指定検査機関となることができたものが、一定の要件を充たしている法人であれば登録検査機関となることができるようになりました。
一定の要件とは、
(1)申請者が株式会社又は有限会社である場合にあっては、受検営業者(食品、添加物、器具又は容器包装を販売、製造、輸入、加工などを行なう者。)が親会社であってはならないこと。
(2)申請者の役員に占める受検営業者の役員又は職員が二分の一を超えないこと。
(3)申請者の代表権を有する役員が、受検営業者の役員又は職員でないことであること。
であり、協会は(3)の要件を満たしていないために、新たに中間法人という法人を設立することとなりました。
平成16年1月20日に設立総会を開催して食肉科研の定款が作成され、3月1日に登記が完了し、正式に発足しました。設立基金は協会から全額拠出され、設立時の社員は、協会、伊藤ハム㈱、㈱中西ハム、信州ハム㈱、大和食品工業㈱、福留ハム㈱の6社でした。食肉科研の初代理事長には、当時の宇田信夫協会専務理事(故人)が就任されました。

新法人設立と同時に、登録検査機関、JAS登録認定機関の資格を取得するための手続きが様々ありましたが、宇田理事長が指揮を執り、新村検査所長(後の理事長)、西坂管理部長(後の専務理事)が中心となって進められました。検査を行う職員は、平成16年4月1日に協会から食肉科研に移籍して検査業務をスタートさせました。
新法人の名称については、「食肉」は残したい、検査だけでなく研究も業務の1つであることがわかる名称にしたい、科学的な見地をもって検査業務を行うことを表現したいなど、職員が思い思いの意見を出し合って、今の「食肉科学技術研究所」という名称となったと記憶しています。
その後、登録検査機関の資格を4月19日に無事取得することができ、JAS法の登録認定機関及び登録格付機関(後に登録格付機関は法律上廃止。)の資格を6月9日付で取得しました。今振り返ると、当時JASを担当していた私は、検査機関が自分たちの給料を稼ぐことの難しさをよくわからないまま船出したように思います。

検査業務評価委員会の設置

食肉科研は登録検査機関となったことで、検査業務を適切、かつ、有効に機能させるために、業務のあり方を一定間隔で見直す必要が出てきました。そのため、理事会の承認を得た3名以上の委員で構成される「登録検査機関検査業務評価委員会」を設置し、1年に1回我々の業務を評価していただくこととなりました(後にJASについても同じ目的で委員会を設置)。委員の構成については、受検営業者の占める割合が半数
を超えないとすることで、登録検査機関としての公平性を保つことにしています。最初の委員会では、様々な作業書が作成されているが、そのとおり行われているのか内部点検をしっかりやって、その結果をこの委員会に報告してほしい、とのご意見をいただき、この委員会を1年間の反省の場にして気を引き締めていかなければと感じました。今も各委員からご質問、厳しいご意見、ときには温かいアドバイスをいただき、食肉科研にとっては有意義で貴重な機会となっています。ある委員から、業界の検査機関として地道に仕事をすることを忘れてはいけないとご指導いただいたのもこの委員会です。

輸入食品の増加

平成17年以降JASは低迷が続いていたものの、抗生物質や農薬を中心に、輸入食品の検査が年々増加していきます。そのような中、平成19年5月に宇田理事長が任期満了により退任され、新村理事長、西坂専務理事の体制となり、我々は輸入食品検査に追われる日々が続きました。
食品の輸入量の増加に加えて、他の検査機関が起こした事故の影響もあり、2010(平成22)年には輸入食品の検査が16,000件を超えるまでになりました。輸入食品の検査は高い精度が要求されますので、高額な検査機器を揃え、維持しなければならず、また、それらの検査機器を扱える検査員を補充するために派遣社員を大幅に増員して対応していました。
この頃の私は、新村理事長の指揮のもと、検査区分責任者として検査員を統括する立場でしたので、このままでは日曜、祝日も稼働しなければ検査が追いつかないのではないか、といった不安を覚えていました。また、JASは規格改正を重ねながらも特にベーコン類、ハム類の格付数量が減少していく中で、JASのあり方が難しくなっているのを強く感じていました。
輸入食品検査は、検査法を開発することとなりましたので、そのことは我々の知識、技術のレベルを向上させる大きなキッカケとなりました。同時に、厚生労働省関東信越厚生局の監査を通じて、輸入食品検査業務における社会的責任というものも重く受け止めるようになりました。当時の担当官から、良い製品(検査結果)は、役所が作るのではなく、自分たちで作るものだということを教えられました。
この後、輸入食品検査が激減して収支が厳しい冬の時代を迎えることとなりますが、話が長くなりますのでまたの機会とさせていただきます。設立から15年を経過した今、僭越でございますが、改めて、土台を作っていただいた初代宇田理事長、それを引き継がれ発展に導いていただきました新村元理事長のお二人に感謝申し上げますとともに、JAS業務及び依頼検査にご協力いただいております皆様に御礼申し上げます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美