新年あけましておめでとうございます。本年も一般社団法人食肉科学技術研究所及び食肉科研コラムをよろしくお願いいたします。 さて、年頭から食中毒のお話で恐縮ですが、平成29年の我が国における食中毒事例を病因別にみると、総患者数16,464人のうち、5割以上をノロウイルスが占めています。サルモネラ食中毒事例は、平成29年は届出患者数が1,183人、総患者数のうちの7.2%と、1999年に液卵に関するサルモネラ属菌の規格基準が設定されて以降減少していますが、海外に目を向けてみますと、アウトブレイクが多数報告されています。そこで、欧米における加熱しない野菜等を使用した食品の喫食に起因するとみられるサルモネラ属菌による集団食中毒事例を見てみましょう。
生のスプラウトによるSalmonella Montevideoによる集団食中毒
2017年12月~2018年2月までにアメリカのイリノイ、ミネソタ、ウイスコンシンの3州でSalmonella Montevideo株に感染した患者が10人報告されました。患者に聞き取り調査を行ったところ、10人のうち8人が、同一のレストランチェーンで食事をした際、生のスプラウトを含むサンドイッチを喫食しており、これが共通食材として疑われました。州等の保健・規制当局は、当該スプラウトの流通先を特定し、汚染経路を追跡調査しましたが、汚染源は特定できませんでした。米国疾病予防管理センター(US CDS)は、「生及び軽く加熱しただけのスプラウトは、食品由来疾患及びアウトブレイクの感染源になることが知られている。スプラウトを喫食する場合は、罹患リスクを低下させるため完全に火を通すべき。」 と注意喚起しています。
EU数ヶ国におけるSalmonella Agonaによる集団食中毒
欧州食品安全機関(EFSA)及び欧州疾病予防管理センター(ECDC)の発表によれば、Salmonella Agonaによるアウトブレイクが、イギリス、デンマーク、フィンランド、ドイツ及びアイルランドの5か国にまたがって発生し、2014年に遡って患者数147人の集団感染例が確認されています。イギリスで2018年に食品から分離されたSalmonella Agona株は、ヒト分離株と遺伝的近縁であることが判明しました。この食品分離株は調理前の洗浄されたキュウリ検体及びキュウリの入った非加熱喫食用調理済み(ready-to-eat、RTE)食品由来とされています。キュウリは、2017年11月から2018年4月までにスペインで生産されたものですが、供給チェーン間での関連性が特定されませんでした。
キュウリの一次生産者は複数で、イギリスの複数の流通業者を通して異なる加工工場へ配送されていました。スペインの一次生産時点及びイギリスまで及び国内での流通の間に採取されたキュウリはいずれも、サルモネラ属菌の検査所検査で陰性でした。微生物学的証拠からキュウリを含むRTE製品が感染媒体である可能性が示されましたが、これまでに汚染が発生した製造チェーンの具体的な箇所は特定できずにいます。
我が国の事故を振り返って
サルモネラは熱や酸には弱いが(70℃、1分間の加熱で死滅)乾燥や低温には強い特徴があり、環境中での生存率が高いと言われています。記憶にある方も多いと思いますが、我が国でも1999年3月、青森県内の工場で製造された乾燥イカ菓子による、過去に例を見ない広域的集団食中毒が発生しました。原因菌は、Salmonella OranienburgとSalmonella Chesterであり、患者は全国46都道府県の1,634名にのぼりました。原因食品となった乾燥イカ菓子は青森県の水産加工品製造メーカーで製造されたもので、青森県の調査*では、周辺の環境(港付近)、製造施設、従業員(保菌していたが発症せず)、乾燥イカから主原因菌型であるSalmonella Oranienburgが検出されました。乾燥イカ菓子の水分活性は0.45~0.62で、病原細菌の発育最低水分活性を考慮すると、流通時における増殖は考えにくいと思われます。青森県の報告では、乾燥させる以前の工程で病原菌を排除する、あるいは、乾燥温度を厳密に調節して病原菌を死滅させるなどの予防策の検討が必要である、と結ばれています。過去の事故を教訓として、事故のない1年にしていきましょう。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 中島誠人



