当研究所は、平成28年度から「精度管理事業(技能評価試験)」を実施しており、おかげさまで3年目となる今年度も引き続き実施する運びとなりました。過去2回のコラム(#28、#34)では、技能評価試験項目ごとの参加者数の推移、試験結果の“ばらつき”の原因などを報告させていただきました。
今回は、技能評価試験にご参加いただいた方々のご意見、ご要望を整理し、ご感想を含めて紹介いたします。

配付試料について

微生物試験について、いただいたご意見は次のようなものでした。
★ 検査項目ごとに試料が分かれていて、不便を感じた。
★ 菌種ごとにそれぞれ解凍するのに時間がかかった。
★ 配付試料を液体(スキムミルク溶液)ではなく、固体試料にしてほしい。
1つの試料で複数の項目を検査できるようにしてほしいとのご要望につきましては、微生物の特性上、複数の菌種を試料に添加した場合、微生物同士が影響し、正しい判定が得られない可能性と、特に定量試験における試料ごとのばらつきが懸念されます。
試料調製方法を変更するためには、繰り返し試験を行って慎重に進めたいと考えております。言うまでもなく微生物は生きていますので、試料の輸送中の変化を避けるため、冷凍状態で配付しています。ご不便をおかけしますが、流水解凍でも問題ありませんので、完全に解凍してご使用していただきますようお願いします。現在は試料の均一性を確保するため、液体試料としていますが、均一性、安定性が確保できましたら、固体試料で試験を実施できるようにしたいと考えています。他に、「扱い易い試料で、やりやすかった。きれいなコロニーが現れたので思わず写真撮影した。」とのお声もいただきました。

試験項目、検査実施記録について

★ 腸管出血性大腸菌O157も検討してほしい。
★ 検査実施記録として記入項目が多すぎる。
腸管出血性大腸菌の検査を実施している試験室が少なく、ご要望も少ないのが現状です。多くの皆様が希望する試験項目があれば、追加したいと考えています。
参加者からは、結果だけでなく、検査実施記録に微生物であれば使用した培地や培養時間などの情報を記入していただいています。これは、試験結果を評価する上で、特に、評価結果が不適の場合に、原因を究明し改善に役立てるためです。亜硝酸根であれば計算式をご記入いただいておりますので、結果が不適切なケースでは計算ミスが原因であることが確認できました。一般生菌数の検査では、公定法では1つのシャーレで30~300個のコロニーが得られるように希釈するとされていますが、その範囲外で計測した結果のご報告がありました。より記入しやすい様式を採用して参りますので、ご理解の上、ご協力をお願いいたします。

試験方法について

平成29年度におけるE.coli検査、大腸菌群検査で使用された培地は、公定法で示されているEC培地、BGLB培地の他に、ペトリフィルム、コンパクトドライなどがありました。食品事業者が行う自主的な衛生管理等のための検査は、迅速・簡便で実用的であって、かつ、十分な精度を持っている試験法が求められます。ペトリフィルム、コンパクトドライは、AOAC(OMA)の認証を取得していますので、公定法との妥当性が確認されています。効率よく精度の高い検査結果を得るために気を付けていただきたいのは、これらの簡易同定キットを使用するときは、判定を誤らないように、陽性コロニーの色などの情報を培地メーカーから得ておくことです。
サルモネラ属菌検査は多くの培地を使用します。増菌後の分離培地には酵素基質培地を使用している試験室が多くありました。サルモネラ属菌検査における酵素基質培地は、硫化水素を産生しないサルモネラ属菌*も判別できますので、公定法でも採用されている培地です。培地の特徴を把握しておかれることは、陽性の見逃しをなくす方法の1つと考えられます。
亜硝酸根の検査では標準溶液を使って検量線を立てますが、原点を通過させた5点検量線が最も多くありました。このときの試薬の秤量、標準溶液の希釈を正確に行うことが検査結果の信頼性に繋がりますので、今一度見直していただく機会になればと思います。

参加したご感想

★ 基礎知識や技術を再確認することができた。
★ (通常陽性結果はないので)確定試験まで行えて、陽性試料の確認ができたことは非常に良い訓練になった。
★ サルモネラ属菌陽性の場合の培地の性状を確認することができ、知識や技術の向上に繋がったと実感している。
★ 検査技術研修会にも参加した。そこで学んだことが十分に生かせていないが、今後試験方法を変更するときは質問させてほしい。
皆様の試験室では微生物検査で「陽性」試料に出会うことは少ないと思います。この技能評価試験で陽性試料をよく観察していただき、日頃の検査に生かされることを願っています。
多くの皆様に継続してご参加いただけるように努めてまいりますので、今後ともご活用いただきますようお願いいたします。


*:サルモネラ属菌は一般に硫化水素産生性を示しますが、近年、数は少ないものの、硫化水素非産生などの非定型のサルモネラ属菌による食中毒が報告されていることなどを踏まえ、食肉製品におけるサルモネラ属菌試験法は、平成27年7月29日付で硫化水素非産生などの非定型のサルモネラ属菌も検出できる方法に改正されました。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部長 松永孝光