ご承知のように、厚生労働省は、食品衛生法を改正して、HACCPによる衛生管理を制度化する予定です。HACCPはそれ単独で機能するものではありません。「食品衛生法規制の見直しに関する骨子案(食品衛生法等の改正骨子案)」(平成30年1月16日厚生労働省)には、「食品等事業者等は、施設の内外の清潔保持等の一般的な衛生管理に加え、事業者自らが使用する原材料や製造方法等に応じ行う、食品衛生上の危害
の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための衛生管理に関する計画を定め、遵守しなければならないこととする。」とあります。
そこで、一般衛生管理について改めて考えたときに、基本となる『5S』がますます重要になると感じています。

私は、これまでハム・ソーセージ等の製造現場で、次のような場面に遭遇しました。それぞれは些細なことですが、5Sの実行によって解消されると思います。
製造現場のあちらこちらに、マジックやハサミが置かれている。
 ⇒誰が置いたかもわからないので、無くなっても誰も気付きません。
使わなくなった器具類が現場に放置されている。
⇒使わないので、そのモノの周辺には近寄らず、清掃しません。その結果、害虫の潜伏場所になることがあります。
開封後の粉末の添加物等の袋の口を開けたまま保管している。
 ⇒アレルゲンのコンタミが起こりやすくなり、添加物等は湿気を帯びて使えなくなります。
鼻をマスクで覆っていない従業員がいる。
⇒せきやくしゃみをすると、飛沫は約2メートル飛ぶと言われています。

5S活動は、掃除や片付けによって職場環境をきれいにする美化活動ではなく、また、5S活動そのものが目的ではありません。
5S活動の目的は、
★ ムダ、ムラ、ムリを省き、コストダウンや生産効率を図る
★ 設備の適正管理と職場の体質改善を図る
★ 一般衛生管理のレベルアップ
★ HACCPやFSSCなどの導入に向けたシステムの基礎作り です。

5S活動は、製造現場だけでなく、食肉科研のような試験検査室にも当てはめて実行していくものです。例えば、試薬や培地が管理された状態にないと、使いたいとき(特に通常検査しない検査項目を検査するとき)に探せない、止むを得ず購入するというムダが発生します。誰かが適切に保管しないと、他の人もそのムダに付き合わされて、次第に適正保管しなくてもよいという意識が伝染します。探していた試薬、培地が見つかる頃には使用期限が過ぎている、といった悪循環に陥ることが想定されます。また、SOP(検査実施標準作業書)が整理できていないと、より良くなるように改定したのに古いバージョンで検査してしまうミスが起こり、検査の信頼性が担保できません。

最後にもう一度。「異物混入源を絶つ」という観点で、現場に思い当たるモノがないか、確認してみませんか。
★ 前は使っていたけど、今は使っていないモノ
★ そのうち使うつもりで置いてあるけど実際はまったく使わないモノ
★ 要らないから処分してもよいが、面倒なのでそのままになっているモノ
★ 高かったので廃棄するのがもったいないモノ

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美