食肉及び食肉製品は、その美味しさと、国民の重要な食料資源として、その消費を伸ばしています。
そこで、これらの安全性を確保するためにどのような食品衛生規制が取られてきたのかについて、主だったものを振り返ってみましょう。

1 明治~大正

わが国の食品の安全性に関する規制が明文化されたのは、明治時代に入ってである。そのはじめは、文明開化で牛肉が食べられるようになったことに伴う明治4年大蔵省布達「と牛取締り」で、と畜場の設置場所の制限、病牛、死牛の肉の販売禁止等が規定された。
明治39年には現在のと畜場法の前身となる屠場法が制定され、大正15年、警視庁は食肉営業取締規則制定し、営業を行うものは所轄警察署の許可を受けなければならないこととした。

2 昭和21年 「食品衛生法」の誕生まで

第2次世界大戦が終了し、昭和21年「日本国憲法」が公布され、同22年、法律に基づき、都道府県知事は、営業者に対して、飲食物其の他の物品取締に関し行政庁に属する職権を行うとし、当該職権を行使するため、当該都道府県の官吏又は吏員の中から都道府県知事が任命した食品衛生監視員を置くこととした。これにより食品衛生行政は警察行政から都道府県の衛生所管部局へと移り、現在に至っている。同年、「食品衛生法」が制定された。

3 昭和42年 営業許可制度、食品衛生管理者の設置

昭和23 年食品衛生法施行規則により、食肉販売業及びハム・ソーセージ・ベーコン等の製造業が都道府県知事の許可営業の対象とされた。同28年食品衛生法施行令制定により現在の食肉販売業、食肉製品製造業が許可業種とされ、同42年、いわゆる豚コレラ事件発生に伴い食肉処理業が許可業種に加えられた。また同時に、食肉製品製造業に食品衛生管理者の設置が義務付けられた。

4 昭和57年 非加熱食肉製品の規格基準の制定

食肉製品に対する嗜好の多様化、その製造技術の進歩、諸外国における生産及び流通の実態等を勘案し、従来我が国で製造、販売等が認められていなかった非加熱食肉製品(生ハム)について、新たに規格基準等が設けられた。
非加熱食肉製品については、新たに水分活性に係る規定を設け、その水分活性は0.94 以下でなければならないこととし、くん煙又は乾燥について、肉の温度を20℃以下又は50℃以上に保持しながら、水分活性が0.94以下になるまで行うこととしたのは、一般に食中毒菌の増殖に至適な温度帯を避けるとともに、乾燥により微生物の増殖を制御し、又は微生物を死滅させる効果を考慮したものである。

5 平成2年 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律公布

国民の食生活の多様化、健康志向の高まり、ブロイラー等の食鳥の大量生産、食鳥処理の機械化及び大規模化等に伴い、食鳥肉の消費量が大幅に増加してきている一方、食鳥の疾病り患率も高くなってきており、カンピロバクター食中毒等食鳥肉に起因する食中属も発生しているため、疾病り患食鳥肉の排除、食中毒細菌による食鳥肉汚染の防止等その安全性の確保が急務となっていたことから、と畜場法で検査が義務付けられている牛、豚等の獣畜と同様に、食鳥についても新たに検査制度を設け、疾病り患食鳥肉を排除するとともに、食鳥処理の事業について、衛生上の見地から、食鳥処理場の構造設備の基準、衛生的管理の基準が定められた。

6 平成5年 食肉製品の規格基準の改正

食肉製品に対する嗜好の多様化、その製造技術の進歩、諸外国における生産及び流通の実態等を勘案し、従来我が国で製造、販売が認められていなかった食肉製品について新たに規格基準が設けられるとともに、微生物規格の全面的見直しが行われた。
食肉製品の分類に応じて、E.coli、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属菌、サルモネラ属菌等の規格基準が定められ、その試験法が通知で示された。この試験法は現在も適用されている。

7 平成7年 日付表示を期限表示に変更

食品衛生法に基づく食品等の日付に係る表示の基準については、原則として、製造又は加工の年月日等を表示することとされてきたが、近年の食品の製造・加工技術の進歩等を踏まえ、食品の安全衛生を確保する上で、品質保持に係る情報としては、製造年月日等を表示することよりも、品質保持が可能な期限の表示を行うことの方が有用となってきたため、製造年月日等の表示に代えて、消費期限又は品質保持期限(現在の賞味期限)の期限表示を行うこととされた。

8 平成7年 食品衛生法の一部改正

HACCP に基づく食品の衛生管理を行うため、総合衛生管理製造過程について厚生大臣の承認制度が設けられ、多くの食肉製品製造施設が厚生労働大臣の承認を受けた。

9 おわりに

食肉、食肉製品の衛生規制の主なものを見てきましたが、現在、これらの食品が安全性に関し消費者の信頼を得ているのは、これらの規制の下、先人のたゆまぬ努力の賜物であることに感謝するばかりです。
また、本コラム執筆に当たり、森田邦雄前理事長のご教授に感謝いたします。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美