当研究所が昨年からスタートした事業の1つに、「精度管理事業(技能評価試験)」があります。技能評価試験は、当研究所で調製した標準試料を試験室(依頼者)に配付し、依頼者から報告いただいた検査結果を、統計的処理による技能評価を行い、結果を依頼者に通知するものです。
この事業の実施に至る経緯及び背景及び初年度の成果については、コラム#28 でご紹介したところですが、今回は初年度からの変化などについて、感想を含めてご紹介いたします。

技能評価試験参加者数

参加者数は延べ493名で、昨年度より141名増えました。前年度同様に、複数名が同時に参加された食品事業者もありました。いずれの検査項目も前年を上回り、一般生菌数及び黄色ブドウ球菌は初年度に比べ30名増と、当初の予定を大幅に上回りました。(表1)

技能評価試験結果~初年度との比較~

【一般生菌数】
97%の参加者の値が管理限界線内1にあり、良好な結果と評価されました。初年度は 65%でしたので大幅に向上したと言えます。一般生菌数に限りませんが、参加者数が 増えたことによってデータのばらつきが小さくなったことも考えられますが、検査実 施方法が統一されてきたことも向上した要因の1つと考えられます。管理限界線を越 えたケースについて検査工程記録書2を精査しますと、凍結状態で配付した試料を解
凍後に十分攪拌しなかったことが検査結果に影響を及ぼしたと考えられるものもありました。

【黄色ブドウ球菌】
88%の参加者の値が管理限界線内にあり、その割合は、初年度の46.6%に比べ大幅に増加しました。検査実施方法が統一されてきたこと、初年度に見られた、菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが大幅に減少したことが向上の要因と考えられます。一般生菌数に比べて管理限界線内の割合が若干低かったことは、0.1mlという非常に少ない量の試料液を培地に塗抹する黄色ブドウ球菌公定法そのものの性質に起因すると考えられます。一般生菌数よりもさらに安定した技能が求められる検査項目と言えます。

【E.coli】
陰陽性を判定していただく検査です。陰陽性を正しく判定できた割合は96%で、初年度よりもやや高くなりました。初年度に見られた、検査試料の取り違えや検査工程でもコンタミネーションの可能性はありませんでした。

【大腸菌群】
陰陽性を正しく判定できた割合は87%で、初年度とほぼ同数でした。正しく判定できなかったケースの検査工程記録書には、複数の試験用培地で陽性コロニーの特徴的な色、光沢が確認できなかったとの意見がありました。この技能試験は公定法によらなくても、普段行っている検査法で参加いただけますが、日頃使用している培地上に現れる陽性コロニーの特徴を培地メーカーなどに確認しておくことで、日頃の検査の信頼性が確保できると思います。

【サルモネラ属菌】
陰陽性を正しく判定できた割合は94%で、初年度よりも若干高くなりました。正しく判定できなかったケースの検査工程記録書から、検査工程または試験室内のコンタミネーションが起きたと推察されたケースが複数ありました。サルモネラ属菌検査は、他の検査項目に比べ検査工程が複雑なので、コンタミネーション防止に注意を払うことが大切です。

【亜硝酸根】
92%の参加者の値が管理限界線内にあり、良好な結果と評価されました。この割合は前年度とほぼ変わりませんが、今年度はヒストグラムの形状がより正規分布に近く、参加者の報告値が全体的に中央値に近く、狭い範囲に分布していました。これは、参加者全体の検査精度が向上していることを示しています。管理限界線を越えたケースは、報告値3点の“ばらつき”が大きく、検査操作に原因があると考えられました。

2年目の精度管理事業を終えて

2 年目を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。初年度終了時には、次年度も多くの方々にご参加いただけるかどうか懸念していましたが、ありがたいことに前年度以上の参加者数でした。
また、前述しましたように、今年度はすべての検査項目で、良好な結果が多く、この事業の目的である業界全体の検査精度のレベルアップに貢献できつつあるのではないかと役職員一同感じています。
技能評価試験は、当研究所の試験室で行う「検査技術実技研修会」と併せて活用いただくことで、さらに検査技術に自信が持てるのではないかと思いますので、次年度も2つの事業を継続して参ります。
終わりに、この技能評価試験は、(公社)日本食肉協議会の「食肉加工品検査技術の高位平準化事業」の助成により実施できましたことを、改めて感謝申し上げます。

*1:参加者全体の平均値の30%(下部限界線)及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部長 松永孝光