厚生労働省の「食品衛生法改正懇談会」(座長:川西徹・国立医薬品食品衛生研究所長)は報告書を取りまとめ、11月15日に公表しました。
この懇談会は、近年の食品安全をめぐる環境変化を踏まえ、「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」や「食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会」での検討結果を踏まえつつ、幅広い観点から、中長期的に取り組むべき事項を含め、食品衛生法の改正の方向性等の検討を行うために設けられたものです。平成29年9月から11月にかけて5回にわたり開催され、食品衛生法に基づく食品衛生規制全般にわたる議論が行われました。
報告書の内容のすべてが法改正につながるものではありませんが、食品事業者に対するHACCPの義務化、合成樹脂容器包装のポジティブリスト制度化については法改正の準備がなされているので、報告書の概要をご紹介し、法改正の内容が明らかになった時点で改めて紹介することにしたいと思います。
なお、厚生労働省は食品衛生法の改正案を本年の通常国会に提出するものと思われ、HACCPの義務化は、改正法成立後3~5年の経過措置が見込まれることから、平成33(2021)年~35(2023)年3月までには導入する必要が生じるものと見込まれます。
主な提言内容は次のとおりです。
1.健康被害の防止や食中毒等のリスク低減
① 食中毒対策の強化
・ 食中毒対策においては、調理段階における対策だけでなく、フードチェーン全体を通じた衛生管理を向上させることが重要である。特に、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌等は、と畜場や食鳥処理場における食肉処理の段階での食中毒菌汚染等も想定されることから、これらの段階での対策が重要である。また、ノロウイルスやカンピロバクターは、食中毒の発症に必要な菌数が他の食中毒の原因菌と比べて少ないことなど、定量的なリスク評価が重要である。さらに、対策に当たっては、効果をあげたサルモネラ対策や腸炎ビブリオ対策と同様、他の食中毒対策においても、生産段階とその後の段階のフードチェーン全体を通じた連携強化を図ることが必要。
・ 広域的な食中毒事案に対応するため、厚生労働省、都道府県等の関係者間での連携や食中毒発生状況の情報共有等の体制を整備
② HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の制度化
・ HACCPによる衛生管理を制度化(全ての食品等事業者を対象に、衛生管理計画を作成し、手洗い励行等の一般衛生管理に加え、事業者の規模等に応じたHACCPによる衛生管理の実施を求める)
③ リスクの高い成分を含むいわゆる「健康食品」等による健康被害防止対策
・ 健康被害防止の観点から、リスクの高い成分を含むいわゆる「健康食品」等について、製造工程管理や原材料の安全性の確保のための法的措置を講じ、実効性のある仕組みを構築
・ 事業者から行政への報告の制度化を含む健康被害の情報収集・処理体制を整備
④ 食品用器具及び容器包装規制の見直し
・ 認められた物質以外は原則使用禁止とするポジティブリスト制度導入に向け、対象材質・物質の範囲、事業者間で伝達すべき情報やその伝達方法、適正な製造管理等について具体化
2.食品安全を維持するための仕組み
① 営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設
・ 現在政令で定める34営業許可業種について、食中毒リスクや営業の実態に応じて、許可対象業種を見直すとともに、営業届出制度を創設
② 食品リコール情報の把握・提供
・ 食品等事業者が自主回収情報を行政に報告し、行政が国民に提供する仕組みを構築
③ 輸入食品の安全性確保・食品輸出事務の法定化
・ 輸入食品の安全性の確保のため、輸出国段階での対策強化として、HACCPによる衛生管理や乳製品・水産食品等の衛生証明書の添付の輸入要件化
・ 食品の輸出のため、自治体の食品輸出関連事務の根拠規定など、法的な規定の創設
3.食品安全に関する国民の理解促進
リスクコミュニケーションの強化
・ リスク等に関する情報を正しく消費者に伝えるため、行政から国民への情報の発信方法や内容を工夫
・ 国民との双方向の情報及び意見の交換を推進

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
理事長 森田 邦雄



