2025(令和7)年度技能評価試験を終えて
これまでのコラムでもご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から主に自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして年に2回の頻度で外部精度管理(技能評価試験)事業を実施しています。お陰様で2025(令和7)年度で10年目を迎えることができました。
今回は、2025(令和7)年度技能評価試験を終えて、結果や検査における注意事項等についてご紹介させていただきます。
参加者数
2025(令和7)年度の参加者数は延べ656名で、過去最高となり、多くの方にご参加いただきました。全項目において、過去5年間の平均参加者と比べて10%以上増加しました。

2025年度の技能評価試験結果
《一般生菌数試験》
この試験は試料中の生菌数の数を測る検査です。全報告値のち96%が適正な結果の範囲内(管理限界線内*1)にありました。適正な範囲を外れた報告値の情報記録である、検査工程記録書*2を精査したところ、外れの要因として試験開始時に配布試料の攪拌不足により均質化が不十分である、試料液の希釈操作の手技に問題があると推察されました。
また、試料の希釈倍率を誤ってしまったために、適正な量を算出できなかったなどのケースもありました。
《黄色ブドウ球菌試験》
この試験も一般生菌数の試験と同様に黄色ブドウ球菌の数を測る検査です。全報告値
のうち77%が適正な結果の範囲内にありました。適正な範囲から外れた報告値の情報記
録を精査したところ、その測定値の多くは、適正な範囲の幅を下回っている傾向があり
ました。この試験は、他の試験に比べて培地に接種する試料液の量が非常に少なく
『0.1ml』です。『0.1ml』を採取する手技を適切に行うことがポイントのひとつとなり
ます。検査に必要な手技を習得することも大事です。
《E.coli試験》
この試験は、2種類の試料にE.coliがいるか・いないか(陰陽性)を判定する検査です。どちらかの試料にE.coliを確認できれば陽性、確認できなければ陰性となります。
陰陽性を正しく判定できた割合は97%でした。正しく判定できなかった参加者の情報記録書を精査したところ、試料採取時に2種類の試料を取り違えてしまったために、誤判定したと推察されたケースがありました。こちらは初歩的なミスであり、検査開始時点の試料の確認は十分に行うことが必要だと考えます。その他、発生したコロニーの色が薄かったために陰性と誤判定したケースがありました。これは普段、自社工場での品質管理検査では、ほとんど陽性試料を判定する経験がないことにもよるものでしょう。
《大腸菌群試験》および《サルモネラ属菌試験》
この試験は、E.coliと同様に陰陽性試験です。陰陽性を正しく判定できた割合は大腸菌群が97%、サルモネラ属菌も97%でした。正しく判定できなかった参加者の情報記録を精査したところ、E.coliと同様に試料の取り違えが原因と推察されたケースがありました。また、検査を適切に実施し、正しく判定したにも関わらず、最終的に結果報告書へ記載する際に転記ミスをしたケースもありました。どちらも初歩的なミスであり、検査開始時から結果報告書への記載に至るまで慎重に進めること、実施者以外の視線で結果の確認を行うことが重要と感じました。
《亜硝酸根試験》
亜硝酸はハム・ソーセージに使用される発色剤のひとつで、この試験では試料中の亜硝酸イオンの量を測定するものです。
全報告値のち86%が、ばらつきがなく適正な結果の範囲内にありました(Zスコア*32未満)。適正な範囲を外れた参加者の情報記録を確認したところ、3点の報告値のうち1点を桁違いの値で報告していた、適切な濃度の範囲内で検量線が作成されていなかったため測定値が外れてしまった、検量線の傾きが低いためその作成方法に問題があると推察された等のケースが認められました。精確な値を算出するためには、試料の抽出方法はもちろんのこと、使用する亜硝酸標準品の保管状態や標準溶液の調製方法、検量線の作成頻度などの見直しが重要と考えます。
おわりに
2025(令和7)年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。多くの食品検査施設において、自社の検査結果に対する信頼性確保向上の意識が高まっていること、そのために本事業をご活用いただけていることを実感しております。
当研究所の精度管理事業は、今回コラムで報告した『技能評価試験』の他に、講義と検査実習を組み合わせた『検査技術実技研修会』を年に1回の頻度で実施しています。受け入れ人数は、最大6人までと少人数制ですが、公定法や簡易法における検査技術の習得をすることで、自社の検査方法等を確認することもできます。少人数ですので、講師に質問がしやすいなどの利点もあります。自社で実施している検査の『ここがうまくいかない』、『先輩からの口伝であったためこの方法で大丈夫なの?』、『この工程はどうして必要なんだろう?』などなど、日ごろ疑問に感じていることをぜひ講師にぶつけてくたさい。解決できる良いチャンスとなるかもしれません。技能評価試験の結果において不適となった項目があった方は、この研修に参加することで、ご自身の検査手技を確認できる良い機会になると思います。
さらに、本技能評価試験の結果が不適となった項目があったとしても、そのままにせず、継続的に参加し技能レベルを確認することで、自社の検査室の検査精度向上に繋げていただきたいと思います。次回の技能評価試験は、令和8年度第1回の開催を5月上旬にご案内する予定です。皆様のご参加をお待ちしております。
*1:微生物試験においては、参加者全体の報告値の平均値の30%(下部限界線)以上及び300%(上部限界線)の範囲内のことであり、この範囲内であれば「適正」と評価されます。
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録のこと。
*3:参加者全体の報告値の平均値と標準偏差(ばらつき)を元に算出した値で、平均値からどのくらい離れているかを示す尺度であり、Zスコアが2未満であれば「適正」と評価されます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 瀧 晴香



