世の中には様々な食品がありますが、その中から消費者が食肉や食肉製品を購入して食べようとする動機は、3つあると言われています。1つめは、好ましい味や香りを有していること(おいしいこと)、2つめは、いわゆる“ハレの日”のような非日常の場面で、普段よりも楽しみや喜びを感じるため (1人焼肉や家族でバーベキュー、お祝い事のメインディッシュなど)、3つめは、欲しい栄養を摂取し、健康や生命を維持するためです。最初の2つは、ヒトに特有の動機ですが、最後の3つめの動機は、ヒトに限らず、食肉を食べる動物に共通と言えます。食肉や食肉製品を栄養素としてとらえ、食べることは、動物としてのヒトの本能に由来する最も重要な動機と言えるでしょう。そこで今回は、食肉や食肉製品を食べることの根本とも言える栄養性について、紹介します。
栄養性のカギとなるのは「量」と「質」
ヒトが食肉や食肉製品に求めている栄養素は何か? 一番に挙げられるのは、皆さんご存知のとおり、「たんぱく質」です。たんぱく質は、家庭科の授業で「体を
作る栄養素」と習います。体とは、筋肉・骨・血液・内臓などの器官を指します。他方、これらの器官それぞれに「家畜の・・・」を付けると、我々はこれらを食べていることに気づきます (骨は置いておきましょう)。つまり、食肉や食肉製品由来のたんぱく質が「体を作る栄養素」となる理由は、食肉や食肉製品が元々家畜の体を構成していたものだからということになります。さらに、この食肉や食肉製品のたんぱく質は、他の食品と比べて、「量」が多く、「質」が良いという特長があります。この2つの特長を紐解いていきましょう。
まず、「量」です。食肉に含まれるたんぱく質量は、およそ20%です。ここで、一汁二菜の食卓をイメージしてみます。“主菜”は食肉として、この他の“主食”や“副菜”のたんぱく質量は、米で3%、副菜が煮ものだとすると茹でた野菜で1~2%ですので、食卓において、食肉はたんぱく質の主要な供給源になっていることがわかります。また、例えば納豆もたんぱく質を多く含みますが(たんぱく質量16%)、食卓の“主菜”となる機会が多いのは、やはり食肉類でしょう。つまり、食肉や食肉製品は、たんぱく質量が多いことに加え、一食での食べる量も多いことで、我々にたんぱく質を供給していると言えます。
次に、「質」ですが、これはたんぱく質を構成するものは何か?という話しです。たんぱく質を構成する物質は、「アミノ酸」で、この性質がたんぱく質の「質」ということになります。たんぱく質を食べると、体内でアミノ酸に分解され、吸収されます。アミノ酸同士は、結合することが可能で、アミノ酸という細かいパーツを繋げていくと、たんぱく質が出来上がります。例えば、電車のおもちゃに小さな線路を繋げていくものがありますが、この小さな線路 (アミノ酸)を繋げると、立体的な線路(たんぱく質)ができるようなイメージです。例え話を続けますが、小さな線路が真っすぐの形のものしかないと、出来上がる線路も単純な真っすぐのものになります。立体的で複雑な線路を作ろうとすると、真っすぐではない、形の違う線路も必要となります。たんぱく質で作られる体の器官(筋肉、骨、臓器など)は、単純な作りではないので、複雑な器官を作り上げるためには色々な種類のアミノ酸が必要となります。つまり、食肉や食肉製品のたんぱく質の「質」が良いことは、そのたんぱく質が色々な種類のアミノ酸で構成されていることを指しています。先述したとおり、食肉等は、元々家畜の器官として機能していた訳ですから、その器官に必要なアミノ酸が揃っているのは当然と言えます。

アミノ酸の中でもヒトが体内で作り出せないアミノ酸のことを「必須アミノ酸」と呼びます。これは9種類あります。必要な栄養素であるにもかかわらず体内で作り出せないので、食べて摂取する必要があります。この必須アミノ酸には、栄養素として重要な性質があり、これは必須アミノ酸9種類のうち、1種類でも欠けてしまうと、他の8種類のアミノ酸も栄養素として利用することができないという性質です。この状況を再び線路のおもちゃで例えますと、線路のパーツが1つだけ足りないという状況になると、完成形を作り上げることができませんし、それ以外のパーツが沢山あったとしても、使うことはできずに余ってしまいます。必須アミノ酸も同様で、9種類全てが十分に揃っていることが重要で、そこにたんぱく質としての栄養的価値があることになります。食肉や食肉製品は、この9種類の必須アミノ酸が十分に備わっています。
このことを栄養学では、アミノ酸価(化学価)が高いと表現します。これに対し、生物価という評価方法もあります。これは吸収されたたんぱく質が、どれだけ体内に留まるかを示したもので、一般的に動物性たんぱく質は、植物性たんぱく質よりも生物価が高いことが知られています。さらに、消化吸収率は穀類90%、豆類70%と比べて、食肉類で100%に近く、これも高いです。植物性の食材は、食物繊維を含むため、吸収が妨げられると考えられています。以上が、食肉、食肉製品のたんぱく質は「質」が良いと言われる理由です。
食肉製品にたんぱく質の基準値がある
JAS規格では、ハムやベーコンにたんぱく質含量の基準値があることをご存知でしょうか? JAS標準・上級は16.5%以上(結着材料を使用したものは17.0%以上)、JAS特級および熟成類は18.0%以上となります。
この検査は製品の赤肉の部分を使って行います。これらの基準値の意味を、ここまでの栄養性の話しを踏まえて考えると、JAS規格にあるハムやベーコンのたんぱく質の基準値は、「消費者に期待される栄養性を確保するため」に設定されていると言えます。冒頭に述べた消費者が食肉製品を購入する動機の1つに栄養性があることに繋がります。
今回は、食肉や食肉製品のたんぱく質の栄養性について紹介しました。食肉や食肉製品のたんぱく質は、社会に求められている栄養素であり、その体を作るという機能から、子どもの成長のみならず、高齢者の健康維持にも大きく貢献することが期待されます。食肉や食肉製品にたんぱく質はあって当たり前ですが、あえてたんぱく質に注目することも訴求ポイントになるかもしれません。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
理化学部 中村幸信



