腸管出血性大腸菌による食中毒について
今回は、このコラムでも何度か取り上げられている『腸管出血性大腸菌』について、令和6年度厚生労働省食中毒統計から発生数、発生状況、予防方法を整理してお知らせします。
腸管出血性大腸菌は主要な食中毒原因菌として知られ、食肉と関連が深い細菌です。腸管出血性大腸菌は「表面抗原」や「べん毛抗原」等によりさらにいくつかに分類されます。代表的なものは「腸管出血性大腸菌0157」で、こちらは皆様よくご存じだと思います。「0157」とは○抗原として157番目に発見されたものを持つという意味です。それ以外にも 「026」や「0111」 等が知られています。
令和6年度の厚生労働省食中毒統計によると、腸管出血性大腸菌による事件数は16件、患者数は124人、死亡者はいませんでした。過去10年間では、年間10~30 件、患者数は100~1,000人で推移しています。アニサキス、ノロウィルス、カンピロバクターなどに比べると事件数は多くありませんが、平成28年には共通の原因食品により合わせて10人が亡くなる等、死者の出た事例が発生しています。
腸管出血性大腸菌による食中毒事例については、国内では、焼肉店等の飲食店や、食肉販売業者が提供した食肉を、生や加熱不足で食べて感染する事例が多く発生しています。海外では、肉類の他、生鮮野菜を食べて感染した事例もあります。
直近の腸管出血性大腸菌O157 感染症の集団発生について
川崎市は令和7年10月24日、腸管出血性大腸菌0157感染症の集団発生があった旨を公表しました。令和7年10月20日、川崎市内の医療機関から、中原区内の県立高校に通学する複数の生徒が腹痛、下痢、血便等の症状により受診しており、いずれも2年生である報告が川崎市保健所にありました。これまでの調査から、体調不良者は10月14日から17日に沖縄県に修学旅行に行った当該高校2年生に発生、10月23日現在で計96人に腹痛、下痢、血便(もしくはその一部)症状があり、そのうち21人が腸管出血性大腸菌 0157に感染していることを確認しました。その後、沖縄県薬務生活衛生課より令和7年10月29日、沖縄本島・糸満市のレストランを原因施設とする0157集団食中毒が発生したことが報道を通じて発表されています。原因食材は今のところ特定されていませんが、170人の修学旅行生らに腹痛や下痢や血便等の症状が表れ、一部からは腸管出血性大腸菌 0157 が検出されました。その他の有症者の一部からは別の大腸菌も検出されています。
腸管出血性大腸菌(0157) 感染症の予防について
腸管出血性大腸菌は75℃で1分間以上の加熱で死滅しますので、食肉も加熱して食べる限り、安全です。
腸管出血性大腸菌感染症は、初夏から初秋は発生率の高い時期として注意が必要です。しかしながら気温の低い時期でも発生が認められます。症状には個人差がありますが、下痢、腹痛、血便、発熱などの症状がみられ、重症になると溶血性尿毒症症候群(HUS) を引き起こすことがあるため、特に抵抗力の低い乳児や高齢者に注意が必要な感染症です。
腸管出血性大腸菌の感染は、飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取したり、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。
腸管出血性大腸菌は100個程度の菌数でも感染すると言われていますが、感染するのは菌に汚染された飲食物を摂取したり、患者さんや無症状病原体保有者の糞便で汚染されたものを口にした場合だけで、話をしたり、咳・くしゃみ・汗等では感染しません。
腸管出血性大腸菌に限ったことではありませんが、感染を予防する基本は手洗いです。排便後、食事の前、下痢をしている子どもや高齢者の排泄物の世話をした後等は、せっけんと流水で十分に手洗いをしましょう。外出や排便の後の手洗いや、食肉等は十分に火を通すことなどによる感染予防が大切です。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部 岡本武



