HACCP完全義務化から4年が経過して
2021年6月から「HACCP に沿った衛生管理の制度化」が完全施行され、すべて の食品事業者には、「HACCPに沿った衛生管理」の実施が義務付けられ、「衛生管理 計画」を策定し運用することが求められました。それまで飲食店や小規模事業者で は、経験値を基にした属人的な加工や処理が主でしたが、衛生管理を目的とした加 工、調理等には温度や時間の管理など定量的かつ客観的な要素が要求されること になりました。
今回のコラムは、制度完全実施から4年が経過した現在の食肉加工業界での導入 状況の実態把握、現場が抱える悩みなどをご紹介いたします。
「HACCPに沿った衛生管理」の導入状況の実態把握等
日本ハム・ソーセージ工業協同組合や日本食肉加工協会が平成30年会員・組合員企業にアンケート調査をした時点で、「HACCP に基づく衛生管理」(旧A基準)は 約65%、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(旧B基準)は約35%の割合でし たが、令和3年の調査では「HACCP に基づく衛生管理」の割合が約75%と10%増加しています。
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を運用されている事業者は、作業マニ ュアルの文書化や記録類の作成など、これまで馴染みのない管理方法や作業が追 加されることにより一日の作業が増加したことが一番の悩みであると伺いました。 一方「HACCPに基づく衛生管理」を運用している施設では、HACCPシステムを効果 的に実施するために、組織全体がルールを遵守できるよう、全従業員に対して十分 な教育を行う必要があります。たとえば、導入初期には従業員に対してHACCPの基 礎知識を習得させるための研修が不可欠です。しかし、外部専門講師を招いた講習 会やオンライン学習プログラムの導入にはコストが発生するため、これらは企業 にとって大きな負担となっていると聞いています。

HACCPはスタートしてからが重要
HACCPシステムや衛生管理のレベルアップを効率的・効果的に行うために、PDCAサ イクル(「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」 という一連のプロ セスを繰り返し行うこと)を有効活用することが望まれます。PDCAサイクルをくるく る回して、衛生管理計画を自分の施設に合ったより良いものにしていきましょう。
HACCPはプランを立てて終わりというわけではありません。見直しをしてみると 更に効率的に出来そうな工程や、計画したものの実際はうまく実行できなかった 工程など様々な悩みが出てくると思います。また、使用している機器だけでなく人 員の増減や配置転換なども見直しの対象とし、無理なく実行できるプランにブラ ッシュアップしていくことが重要です。まだ見直しをしたことがない方は、この機 会に是非自社のHACCPプランを振り返ってみましょう。定期的に見直しをしている 方も継続的にプランの検証と見直しを実施し、より良いHACCPシステムにしていく ことを意識していただきたいと思います。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
微生物試験検査課長 中川麻衣



