ケーシングについて
ソーセージの製造に使用されるケーシングは、英語で表記すると「casing」となり、これを英和辞典で引いてみると、一番上には「包装」と記載されていました。これにはひょっとすると違和感があるかもしれませんが、さらに遡って「case (ケース・容器)」と聞くと、日本語として馴染みもあり、「包装」という意味がしっくりくるかもしれません。つまり、ケーシングとは、その名のとおり包装の一種であり、物体を包み込む外装として、「物体を保護する」、「形を整える」目的で使用されるものを指します。ケーシングの種類は、「可食性ケーシング」と「不可食性ケーシング」に分類され、可食性ケーシングには、「天然ケーシング」と「人工ケーシング」があります。今回は、この食べられる包装であるケーシングのおいしさへの影響について、ご紹介いたします。
ケーシングのおいしさへの役割
食品のおいしさに影響する要素の1つに、「テクスチャー」があります。「テクスチャー」は、ヒトの「触覚」で感じる要素で、食品が持つ特有の食感のことを指し、ソーセージも特有の食感を持っています。
ソーセージのテクスチャー (Tex)は、「表面」と「内部」の2つに分けることができます。実際に食べる場面を想像すると、ソーセージの「表面」のTexは、特に一口目に感じられ、「内部」のTexは飲み込める状態になるまでに感じられます。これらの食感には、製造工程が影響し、「表面」のTexには、ケーシングの種類の選択や乾燥・スモーク工程等が、「内部」のTexには、原料肉の種類、あらびき・ほそびき、充填の強さ等が影響します。つまり、ケーシングは、一口目のTexを決定する役割を担っており、おいしさに影響する要素の1つと言えます。
ソーセージのケーシングの分析
食肉科研では、国産と外国産のソーセージの品質 (おいしさ)の調査を実施しました(海外食肉加工品品質評価等事業、2021年度)。この調査項目の1つが、「テクスチャー」であり、ソーセージの「表面」 と 「内部」を機器分析に供し、官能試験の結果との関係性を探りました。ソーセージのケーシングの種類は、①天然腸(畜種不明)、②人工ケーシング(コラーゲン)、③ケーシングなし(人工ケーシング(セルロース))の3種類です。機器分析では、多重bite法という方法を採用しました。この方法では、「やわらかさ」、「しなやかさ」、「噛み応え」を分析することができます。
この結果、官能試験における「テクスチャー (物性)の好ましさ」は、機器分析 (多重bite法)から得られたソーセージの表面の「しなやかさ」と正の相関が認められました。つまり、「しなやかさ」の数値が高いほど、ソーセージの一口目の食感が好ましいということが分かりました。
ケーシングのしなやかさ
それでは、ケーシングの「しなやかさ」とは、どのような性質でしょうか? ソーセージを一口噛むと、ソーセージの表面を噛み切ることができますが、この動作において、ケーシングが噛み切れるまでの間に、ケーシングが“たわむ”程度を「しなやかさ」と言います。噛み切れるまでに大きくたわむと、しなやかさがある(数値が高い)ということになります。

実際の天然腸が使用されているJAS特級および熟成ソーセージを分析したところ、これらのソーセージの表面のTexは、強い「しなやかさ」を持っていることが分かりました。さらに、しなやかさの数値にはボーダーラインがあり、しなやかさ1.42で、物性の好ましさの評価が大きく変わります。
ケーシングの種類で比較すると、天然腸と人工ケーシング (コラーゲン)のソーセージ表面のしなやかさに違いは認められませんでした。しかし、多重bite法から得られた「やわらかさ」と「噛み応え」に違いがあり、人工ケーシングの方がやわらかさと噛み応えの数値が低いことが分かりました。「やわらかさ」はケーシングが噛み切れるときにかかる力、「噛み応え」はケーシングが噛み切れるまでに必要なエネルギーを意味します。(例えば、多くのエネルギーを必要とする食品というのは、噛み切るまでに疲れるような食品です。咀嚼回数が多くなるので、疲れる≒その食品はエネルギーを持っているというイメージです。)一般的に、天然腸と人工ケーシング(コラーゲン)のソーセージは、食感が違うと感じられることが多いですが、この結果からは、人工ケーシングは、天然腸に比べて、弱い力と少ないエネルギーで噛み切れることが特徴と言えます。
今回は、ケーシングのおいしさへの影響をご紹介いたしました。ケーシングは包装であり、使いやすさ(充填しやすさなど)も重要視されます。しかし、口に入ることから、食感、さらにはおいしさに影響することに改めて回帰すると、また新たな展開が広がるかもしれません。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
理化学部 理化学試験検査課 中村幸信



