カンピロバクターによる食中毒について
以前このコラムでも何度か取り上げられていますが、カンピロバクターは主要な食中毒原因菌として知られる細菌です。 令和5年度の厚生労働省食中毒統計によれば、事件数ではアニサキスに次いで2番目に多く、患者数ではノロウィルスに次いで2番目に多く発生しています。 令和5年度には石川県で湧き水のカンピロバクターが原因で食中毒が発生するという事例もありましたが、カンピロバクターによる食中毒は1年を通じて発生しており、特に飲食店における生または加熱不十分な鶏肉の喫食による事例が多く報告されています。 カンピロバクターによる食中毒の症状は、下痢や嘔吐など他の感染型細菌性食中毒と酷似しており、死亡例や重篤例はまれですが、抵抗力の低い方は重篤化する危険性もあり、注意が必要です。 また、ギランバレー症候群を発症する場合があることも指摘されています。
「肉用鶏の衛生水準の向上に関する検討会」
これまでも厚生労働省や農林水産省により、カンピロバクター食中毒に関する注意喚起や研究・調査が行われてきました。 それでもなお、食中毒件数が減少しない状況から、農林水産省は、令和6年度、新たに、肉用鶏の生産段階の衛生水準向上の取り組み、消費者及び飲食店に対する情報提供に関する方策を検討するため、「肉用鶏の衛生水準の向上に関する検討会」を立ち上げました。 2024年9月30日の第1回から、12月までに3回開催されており、2025年3月には中間とりまとめが行われる予定です。 検討会の委員は、鶏肉生産加工事業者、管理獣医師、日本食鳥協会、外食事業者、小売事業者、消費者団体及び学術有識者により構成されています。 第3回検討会では「検討の方向性 (イメージ)」が次のように示されています。
肉用鶏の衛生水準の向上等に関する検討会(第3回)
検討の方向性 (イメージ)
1 検討の視点
〇 肉用鶏における衛生管理水準のより一層の向上と、食中毒防止のための関係省庁協働による情報提供の強化が重要。検討の視点として、
①技術面の課題
②社会の意識向上の面の課題
③情報提供の面の課題について
方向性を整理。
2 検討の方向性
(1) 技術面の課題
〇 フードチェーンにおける定量的データが重要。調査の設計から調査データの利活用を含めた実証の調査体系を検討。
〇 カンピロバクターの有効な管理手法(低減対策) については、まずは菌量を抑制できている事例収集など、現時点で望ましい管理手法の明確化。
(2) 社会の意識向上の面の課題
〇 フードチェーンにおいて、科学的知見に基づき、生産者等による自主衛生管理を推進し、食品安全に関する国民の意識の向上につなげることが重要。
〇 カンピロバクター低減対策については、現時点では、生産者・関係事業者等が自らの取組を社会へ発信する手法(「自主宣言」)による自主的な取組を促す仕組みが適当。
事務局からは、当面、生産者・食鳥処理事業者を対象とし、飲食店は店舗数も多く業務形態が多様であることから、飲食店を対象とするかは引き続き検討すると説明があり、了承されました。 上記課題について、3月に示される中間とりまとめで、どのようなカンピロバクター対策が示されるか、注視したいと思います。
【肉用鶏の衛生水準の向上等に関する検討会】 https://www.maff.go.jp/j/study/nikuyoukei_kentoukai/index.html

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
事業統括部微生物部微生物試験検査課 岡本 武



