食肉科研は厚生労働大臣に認可を受けた登録検査機関として、生ハムなどの食肉製品、すしエビなどの水産食品、様々な冷凍食品などについて輸入時における食品衛生法による命令検査、自主検査を行っています。最近では円安やデフレの影響も受けて輸入量が大きく増加している野菜およびその加工品についても検査が増えてきています。そこで、前回私がお話しした(#80)以降、食肉科研が開発した検査項目の概要についてご紹介します。

検査法開発に必要なこと

輸入食品の検査は国に替わって行うものですので、導入する検査法で妥当な結果が得られることを客観的に評価することが求められています。具体的には厚生労働省の「食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン(平成22年12月24日付け食安発1224第1号)」に従って、分析対象である農薬等を定められた量加えた試料を1日2回、5日間分析する試験(「枝分かれ試験」といいます。)を行います。こうして試験で得られた平均値と承認された標準値の一致の程度(「真度」といいます。)等いくつかの定められたパラメータについて妥当性を評価し、目標値をクリアすることを確認します。食肉科研では検査法開発担当部署がその結果を所内の関係者に報告し検査料金などについても議論し、妥当と判断された後、所定の手続きを経て受託可能になります。さらに命令検査として受託するためには厚生労働大臣に申請し認可を受ける必要があります。

開発した検査項目の概要

【ドキシサイクリン】

ドキシサイクリン(英: Doxycycline)は、メタサイクリンから化学的に合成されたテトラサイクリン系の抗菌薬です。グラム陽性菌やグラム陰性菌、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジアなどへ、広い抗菌作用を示します。細菌の蛋白合成を阻害し、静菌性の抗生物質に分類されます。特に脂溶性が強く、経口投与での吸収が極めて良好、組織内移行も良好で長時間持続します。一般的な副作用は、消化器系(食欲不振や悪心、嘔吐、腹痛、下痢など)と皮膚障害(発疹や蕁麻疹、光線過敏など)であります。

ベトナム産養殖エビ及びその加工品が命令検査の対象食品になっています。食肉科研では同じくベトナム産エビ及びその加工品で命令検査になっているエンロフロキサシンと同時分析する検査法を開発し、検査料金を抑え、お客様に提供しております。

【メピコートクロリド】

メピコートクロリドは、1971年にBASF社(ドイツ)により開発されたヘテロ系植物成長調整剤であり、植物体内において主にジベレリンの前駆物質であるゲラニルピロリン酸からコパリルピロリン酸になる酵素反応を阻害し、ジベレリンの生合成を阻害することにより成長を抑制すると考えられています。日本では1991年に初めて農薬登録されており、ポジティブリスト導入制度に伴う暫定基準が設定されています。

中国産にんじん及びその加工品が命令検査の対象食品になっています。

食肉科研が受託している農薬等の違反件数は以下のとおりです。(厚労省HPより)

中国産にんにくの茎のプロシミドン及び中国産にんじんのトリアジメノールは昨年度、命令検査が解除されました。一方、本文中でもご紹介した通りベトナム産エビのドキシサイクリン及び中国産にんじんのメピコートクロリドが2023年に命令検査の対象になっています。このように当研究所では主体とする食肉・食肉製品だけでなく、お客様のご要望にお応えするため、様々な食品の検査法の開発を進めています。

これからも食肉科研はお客様のご要望にお応えし、真の値を追求し、試験検査結果を正確に確実にお届けしていきます。

表1 ≪違反件数≫ (2024年5月31日現在)

農薬プロシミドントリアジメノールジメトモルフメピコートクロリドドキシサイクリン
対象国中国中国中国中国中国ベトナム
対象食品にんにくの茎ブロッコリーにんじんにんじんにんじんエビ
命令検査になった日2019.1.242019.4.92020.6.152020.11.262023.12.82023.2.3
2019(令和1)年度121
2020(令和2)年度2838
2021(令和3)年度1843
2022(令和4)年度171112
2023(令和5)年度010012158
2024(令和6)年度※11※2022

※1:2023.12.27 命令検査解除
※2:2024.02.28 命令検査解除

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘