HACCPシステムに基づく衛生管理講習会(主催:(一社)日本食肉加工協会)は、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオンラインでの開催が続きました。そして、今年2月13日~16日、ようやく4年ぶりに対面で開催されました。当研究所は講師として協力させていただいていますので、久しぶりの対面開催で感じたことなどをお話したいと思います。
講義スケジュール
1日目は、「HACCPシステムの概要と食肉製品に係る危害分析及び微生物制御について、麻布大学の森田幸雄先生がご講演されました。基本的な衛生管理から、HACCPシステムの7原則12手順まで、食中毒情報を交えながらきめ細かな内容でした。続いて、食肉科研から「食肉製品の製法と規格基準及び微生物管理について」、「食肉製品製造工場における一般衛生管理」をお話しして1日目は終了しました。
2日目は、一般衛生管理の続き、そして私から「食肉製品のHACCPによる衛生管理」についてお話させていただきました。ハムソーセージ会館の会議室で開催されたのですが、受講者全員のお顔が良く見えましたので、話のスピードなど時間調節しながら、そして、一部は受講者の方々に「次の(1)を読んでください」とお願いしました。戸惑われたかもしれません。
モデルプラン作成と発表
演習では、各班5~6名に分かれていただき、1班、2班はウインナーソーセージを対象に、3班、4班はロースハムを対象にして(1)製造工程フロー図、(2)危害要因リスト、(3)HACCPプランを作成していただきました。事務局はパソコンを用意されましたので、色々な意見を書き込みやすく、修正し易かったと思います。
ウインナーソーセージ、ロースハムの製品説明書は事務局が提供し、製品の概要を掴んでいただくのですが、その他に「製品説明書記載事項以外の条件」をいくつか提示しました。その1つを紹介しますと、製造工程フロー図は未完成の状態で提供したのですが、「食品素材は3つに分かれています。製品説明書と照らし合わせて、3つに分かれている意味をお考えいただき、危害分析してください」という課題です。これは、受け入れる原材料にどのような危害があるのかを明らかにして、適切な管理方法を選択することを意図しています。このことはとても有意義だと考えていまして、この点は最終日のモデルプラン発表の中で必ず説明するようお願いしました。(その正解はここでは明かしません。)
3日目は、朝からモデルプラン作成演習に取り組んでいただきました。どの班も議論が活発で、互いに、○○さんのところではどのように管理されていますか?自社ではこのようにしているけれど、我々の班としてはこのような衛生管理をすることにしましょうか、など意見交換されていました。講師陣に正解を求めるようなご質問はなく、自分たちでプランを作り上げるという講習会の主旨をよくご理解いただき、取り組まれていたと思います。
出来上がったら全員で振り返り、意見の擦り合わせをして、どこを発表するかについても、話し合われていました。対面なので気になったところは口にし易いようでした。
そして、最終日、いよいよ発表です。各班に与えられた発表の時間は20分です。マイクを持って時間を気にしながら発表すること自体、緊張すると思いますが、皆さんポイントを絞って説明されていました。
その後、40分間の質問と討議です。質問者は、発表者を尊重しながらも、疑問点を解消しようとする熱心さがありました。同じ製品を対象にした2つの班が相互に質問するケースもありました。例えば、製造工程フロー図に清浄度区分を記入していただくのですが、ある班は「汚染作業区域」と「準清浄作業区域」の2つの区分、もう一方の班はそれに「清浄作業区域」を加えた3つの区分にされていて、互いに、なぜそうしたのかを質問し合っていました。原料肉の段ボールと製品の段ボールでは汚染度合いが違うのではないか、といったご意見も出て、「なるほど」と思うような考え方を学ぶ機会になったのではないでしょうか。
講師陣から、危害要因リストでは、「ハザードは重要か」の問に「Yes」としたら、その後のどこかの工程でCCPとするという原則や、病原微生物による「汚染」なのか「増殖」なのかを区別して記入しないと、「No」とした根拠と合わなくなってしまうなどの意見を述べさせていただきました。
そして最後に、私からいくつか総括としてお話させていただきました。1つご紹介しますと、アレルゲンの管理において、コンタミネーションの回避とともに確実に実行すべきは、「使用した原材料に含まれるアレルゲンを正しく表示すること」で、CCPとはなり得なくても「計量・包装」工程を最後の砦と位置付け、表示漏れを防ぐことが大事、とお話させていただきました。昨今の食品回収事例を見れば、適切な表示は重要課題だと思います。
この講習会は、令和6年度も開催されると聞いています。同業他社との貴重な交流の場ですし、これからの食肉加工業界を担う人材の育成という面からも、多くの方々が参加されることを期待しています。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



