このコラムでは初めてお目にかかります。品質保証課の瀧晴香です。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、これまで何度かこのコラムでご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から主に自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業を実施しています。以後多くの皆様にご参加いただき、お陰様で2023(令和5)年度で8年目を迎えることができました。
今回は、2023(令和5)年度技能評価試験を終えて、過去7年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。
参加者数
2023(令和5)年度の参加者数は延べ529名で、多くの方にご参加いただきました。前年度より若干少なかったものの、亜硝酸根以外は過去5年間の平均参加者数と、ほぼ同数であり、継続的にご参加いただいていることがわかります。
【参加者数】
| 試験項目 | R05年度(2023) | R04年度(2022) | R03年度(2021) | R02年度(2020) | R01年度(2019) | H30年度(2018) | 過去5年の平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般生菌数 | 123 | 136 | 121 | 118 | 111 | 102 | 118 |
| 黄色ブドウ球菌 | 76 | 92 | 80 | 81 | 79 | 70 | 80 |
| E.coli | 86 | 106 | 96 | 91 | 86 | 82 | 92 |
| 大腸菌群 | 98 | 115 | 112 | 103 | 93 | 83 | 101 |
| サルモネラ属菌 | 88 | 96 | 94 | 87 | 77 | 78 | 86 |
| 亜硝酸根 | 58 | 70 | 58 | 77 | 66 | 69 | 68 |
| 計 | 529 | 615 | 561 | 557 | 512 | 484 | 546 |
技能評価試験結果
《一般生菌数》
98%の参加者の報告値が管理限界線内*1にあり、適正な結果と評価されました。その割合は、昨年度(96%)よりもやや高い正答率となっています。
管理限界線を越えた参加者の検査工程記録書*2を精査すると、試料液の希釈方法やシャーレへの培地の分注量など検査手順を充分に習得できていないこと、また試料の希釈倍率を誤って計算したことにより、正しく算出できなかったと推察されました。
《黄色ブドウ球菌》
83%の参加者の報告値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度(88%)よりやや低くなりましたが、初年度の2016年度(47%)に比べると検査担当者の技能は確実に向上していると考えられます。希釈倍率を誤って算出しているケースは減少していますが、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算されているケースがあります。また、単純な計算ミスによって不適となってしまったケースもあり、大変勿体ないと思います。一方、試料液を培地に塗抹する量が多かったために菌数が高くなり、管理限界線を上回る結果となってしまったケースもありました。0.1mlという少ない量の塗抹は、検査に必要な技術だと思います。
《E.coli》《大腸菌群》
陰陽性を正しく判定できた割合はE.coliは99%、大腸菌群は100%でした。かなり高い正答率です。
一部正しく判定できなかったものについては、発生したコロニーの色が薄かったために陰性と誤判定していました。実際の検査の現場においては、疑わしいときは推定試験、確定試験、完全試験と段階を踏んで判定されていると思いますので、技能評価試験においても慎重な検査をお勧めします。
《サルモネラ属菌》
陰陽性を正しく判定できた割合は99%であり、昨年度(97%)に引き続き、高い正答率でした。検査担当者の技能は確実に向上していると思います。数少ない正しく判定できなかったケースは、試料の取り違えが原因と推察され、こちらも大変勿体ないミスだと考えられます。
《亜硝酸根》
Zスコア2以内かつR*3が管理限界線以内の参加者は84%で、昨年度(81%)よりやや高くなりました。過去に認められた、濃度単位をppmからg/kgへ変換できない参加者はおらず、この点については、検査結果の処理についての理解が高まっていると考えられました。管理限界線を越えたケースは、試料溶液や標準溶液の正確な定容、試薬の調製方法や検量線の作成方法等の検査の操作性に原因があると推察されました。また、3点間のデータの”ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性が悪い等、検査の習熟度に原因があると考えられました。
2023(令和5)年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。多くの方に継続的にご参加いただき、この事業が多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。もう一つの精度管理事業である検査技術実技研修会は新型コロナウイルス感染拡大により長らく開催できていませんでしたが、2023(令和5)年度は4年ぶりに開催することができました。こちらも参加者から大変勉強になった、有意義な経験ができた等大変うれしいお言葉をいただいております。
調製済みのサンプルを自社で試験し、ご報告いただいた結果を統計的に解析する技能評価試験は、検査担当者の技能レベル確認、検査精度向上のための有効な手段だと思います。次回の技能評価試験は、令和6年度第1回の開催を4月にご案内する予定です。皆様のご参加をお待ちしております。
*1:参加者全体の報告値の平均値の30%(下部限界線)以上及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 品質保証課 瀧 晴香



