このコラムにおける私の執筆内容は、食肉科研が新たに取り組み始めた事業や講習会のご紹介、食肉科研にとって大きな柱であるJASのこと、そして、食品衛生やHACCPに関連したことが中心でした。この中から改めて以下を紹介します。
事業のこと
平成28年度から開始した『精度管理事業』があります(平成18年8月号#16)。この事業は元々日本食肉協議会様の助成事業としてスタートしましたが、お陰様で会員の皆様に好評をいただきましたので、助成事業終了後も継続しています。自社検査ではいつも大腸菌群は陰性の結果を得ていたのに、保健所の収去検査で陽性であった(乳業界で実際に起きたことです。)ということを避けるためにも、検査技術を確認できるこの事業を活用していただきたいと思います。
『食肉製品の規格と表示に関する研修会』について、令和元年の第1回を終えた感想を報告させていただきました(令和2年1月号#54)。当初は対面開催でスタートしましたが、令和2年以降、新型コロナウイルス感染拡大によりオンライン開催となり、5年目に入った今、1年に1回の頻度で、引き続きオンラインで開催しています。遠方の会員の皆様も参加しやすいようです。
令和3年1月から『原料肉勉強会』を始めました(令和3年4月号#68)。開催のキッカケは、食肉に関する検査の増加とともに、ご質問が増えてきて(それも高度な)、「食肉そのもの」について理解を深めていたたくために、家畜の生体から、私たちが食べる肉になるまでの工程に沿って、「と畜と加工」、「畜種と品種」、「格付」、「熟成」等についてお話することにしました。この会の特徴は、希望される企業様ごとの開催という点です。メリットとして日程(時間)調整がしやすいこと、気兼ねなくご質問いただけることなどがあります。講習1.5時間、質疑30分を基本としていますが、予定時間を超えるほど多くご質問いただくことがあります。オンライン開催ですので遠方の会社でも参加しやすいと思います。
JASのこと
JASで使用できる添加物は、コーデックス規格の3.2利用妥当性及び3.3使用条件が示されているだけで、具体的な物質名は挙げられていません。そのため、コーデックス規格と使用できる物質の繋がりについて、2回に渡り解説させていただきました(令和4年9月号#85、12月号#88)。コラムでも書かせていただきましたが、添加物を追加したいときは、コーデックス規格3.2に照らして、業界が判断する仕組みですので、JAS格付を向上させるために、ご要望があればお寄せいただきたいと思います。
令和3年10月号#74では「ハム・ソーセージ・ベーコンの特選表示について」書かせていただきました。「特選」と表示するためには「JASの特級品質基準を満たすもの」とされています。その根拠は「ハム・ソーセージ類の特別表示基準」(平成4年11月18日、農林水産省食品流通局消費経済課長通知)にあります。30年以上前の通知ですので、ご存知ない方も多いと思います。そして、「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約」では「客観的な根拠に基づかない「特選」の表示」が禁止されていますが、その根拠はこの特別表示基準にあります。
熟成JASの”誕生”の経緯(平成29年2月号#21)や熟成期間の7、5、3(シチゴサン)はどこから来たのかについても振り返りました(平成30年2月号#31)。「熟成」の表示基準は、「特選」と同じく特別表示基準からスタートして、それをベースに、平成7年にJASが制定されました。熟成JASは「特色JAS」の第1号ですが、今や「特色JAS」は、手延べ干しめんや大豆ミート食品類など17規格に増えています。
特色JASマークのデザインは、「”信頼の日本品質”をひと目でイメージしていただくために、日本を象徴する「富士山」と、日の丸を連想させる「太陽」を組み合わせてデザイン」されているそうです(農林水産省ホームページより)。マークの色は法律では指定されていないのですが、例示されている赤を基調としたデザインが多く採用されています。おそらく目を引く配色なのでしょう。また、多くがマークの下方に「熟成」と表示されていますので、一目で規格の内容がわかるものになっています。
ハム・ソーセージのJASができたのは昭和37(1962)年です。制定から60年以上が経ち、おそらく今あるJASの中でも最古参のグループだと思います。格付率は当時より低くなっていますが、それでも多くの方々に使われています。他のJAS認証機関の皆様方から、「ハム・ソーセージは等級があるのが良いところですね」、「熟成はマークも目立つし、羨ましい規格です」、といったお褒めの言葉をいただくことがあります。
JAS事業者の皆様、そして、何よりJAS製品をご購入いただいている消費者の方々のおかげです。
ハム・ソーセージは5年ごとのJAS見直し作業が進められているところですが、JASが事業者の提案型となった今、消費者の嗜好に応えていけるよう必要なことは変えていく時代になったと感じています。JAS認証事業者、会員の皆様、(一社)日本食肉加工協会と力を合わせて、農林水産省をはじめとする行政の方々のサポートをいただきながら、JASをバージョンアップさせていけるよう努力したいと思います。
お陰様を持ちまして、食肉科研はこの3月で設立から20年を迎えます。皆様のご支援、ご協力によりまして検査事業を継続できておりますが、それでもようやく成人を迎えたところです。今後とも身近な検査機関としてご活用いただきますようよろしくお願い申し上げます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



