お陰様でこのコラムは100回を迎えることができました。ありがとうございます。初めて日本食肉加工情報に掲載していただいたのは、平成27年5月号でした。食肉科研設立から10年が経過した頃でしたが、財政状況は芳しくありませんでした。

前年に就任された森田専務理事(後の理事長)から、食肉科研がどのような検査業務をしているのか、会員、組合員の皆様に知っていただく機会が少ないのではないかと問われ、日本食肉加工情報という業界の皆様に毎月お届けしている業界誌があるのだから、そこで食肉科研の仕事を紹介させていただいたらどうかとご提案をいただきました。それまで業務の発信に疎かったこともあって尻込みしたのですが、「まずは事業統括部長のあなたが書きなさい」と重ねてのご指示が。

私が書けるのだろうか、そして続けていけるのだろうかと思いながら、原稿に向き合いました。まずは食肉科研の主な業務として、「JASに関すること」、「食品衛生法による製品検査のこと」、「これからのこと(栄養成分表示義務化、HACCPへの対応)」について書かせていただきました。当時は栄養成分表示の義務化がスタートしたときでした。栄養成分は分析値でなくても「推定値」で表示することができるのですが、皆様が自社製品の栄養成分を把握した上で表示するために迅速で精度の高い検査を提供してまいりたい、と結びました。

また、すべての食品事業者がHACCP導入するに当たり、お手伝いさせていただくことをお知らせしました。これは食品衛生の専門家である森田専務がいらしたからこそ書けたことです。

そして、今後の食肉科研の検査業務の方向性を書かせていただいたことで、検査で食肉加工業界に貢献していくことを強く認識させられたスタートとなりました。

多く書かせていただいたこと

その後、歴代の理事長に度々助けられながら、各部長を含め交替で執筆してまいりました。全100回のうち、歴代の理事長は12回、松永部長(現・協会参与)7回、中島部長19回、吉田部長17回、柴田部長9回、最近では理化学試験検査課中村課長にもメンバーに入ってもらいました。そして私は35回執筆させていただきました。

執筆者ごとに振り返ってみたいと思います。松永総務部長は品質保証関係の他に、2018、2019年度に日本食肉協議会の助成を受けて実施した「食肉製品成分表示義務化対応円滑化推進事業」を2回に渡り報告しました。2020年4月からの栄養成分表示の完全実施を前に、事業者の皆様がスムーズに対応できることを目的として、食肉製品の栄養成分分析費用を支援する事業でした。多くのご応募をいただき、2018年は109件、2019年は210点を分析しました。皆様の「推定値表示」にお役に立てていたら幸いです。

中島微生物部長は、微生物に関わる食中毒として「牛レバーにおける腸管出血性大腸菌等の汚染状況の報告」や「サルモネラ属菌検査における3MTM病原菌自動検出システムの導入評価」などの検査法、そして、HACCPの導入よる一般衛生管理の重要性の高まりを受けて、迅速な環境検査法としてATP(アデノシン三リン酸)ふき取り検査を紹介しました。機械器具の洗浄状況をその場で確認できるATP検査は、アレルギー物質を含む食品を製造した後の洗浄確認にも役立つと考えてのテーマでした。現在も、食肉関係の施設を訪問させていただく際には、この検査を活用しています。残念ながら、中島部長は9月末で退職されました。長きに渡り微生物の専門家として、また、JAS検査のエキスパートとして食肉科研に貢献され、そしてこのコラムでも多くの話題を提供してくれました。

吉田理化学部長は、食肉の官能評価、異物検査など、食肉を科学的な視点から執筆した回が中心となっています。食肉科研には変色した食肉の検査も多く持ち込まれます。その原因として、微生物の増殖の他に、食肉の色素タンパクである「ミオグロビン」に関連するケースもあります。その事例を、できるだけ会員・組合員の皆様がお客様に説明しやすいようにと心がけて解説しました。最近では、食肉のおいしさをアピールするための検査のご依頼を多くいただくようになりましたので、その評価事例もいくつか紹介しました。有難いことに最近では、幅広い地域の、さまざまな牛肉、豚肉、鶏肉の評価のご依頼も増えております。このコラムのスタート時に目指した、食肉科研の仕事を知っていただく、という目的に少し近づいたように感じています。

柴田品質保証部長は、検査を支える品質保証の立場から、精度管理についての回が多くなっています。食肉科研は2016年度から外部精度管理事業を実施しています。これは当研究所で調製した標準試料を、希望する試験室にお送りし、その報告された結果を統計処理により技能評価して依頼者にフィードバックするものです。参加者数は年々増加しておりまして、1つの施設から複数名の参加、というケースも増えています。このコラムが、参加されておられない施設の皆様にご活用いただくキッカケになれば、と思っています。

登録検査機関としては、輸入食品に新たに検査命令がかかると、輸入者のご要望に応じて検査法の開発に取り組むのですが、コラムでは最近開発した検査項目についても紹介させていただきました。傾向としては、野菜の残留農薬検査が多くなっています。

私が書かせていただいた回については、次回、食肉科研が発足してから2024年3月で20年を迎える御礼とともに、振り返らせていただきます。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美