これまで何度かこのコラムでご紹介していますが、当研究所は2016(平成28)年度から自社で食肉、食肉製品の検査を実施している企業を対象に、検査結果の信頼性を確保する手段の1つとして外部精度管理(技能評価試験)事業を実施しています。多くの皆様にご参加いただき、2022(令和4)年度で7年目を迎えることができました。
今回は、2022(令和4)年度技能評価試験を終えて、過去5年間との違いや変化などについて紹介したいと思います。
参加者数
2022(令和4)年度の参加者数は延べ615名で、過去最高となりました。過去5年の平均参加者数と比較すると、全ての検査項目で増えていますが、特に一般生菌数、E.coli及び大腸菌群は過去5年の平均に比べて20%以上増加しました。
【参加者数】
| 試験項目 | R04年度(2022) | R03年度(2021) | R02年度(2020) | R01年度(2019) | H30年度(2018) | H29年度(2017) | 過去5年の平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般生菌数 | 136 | 121 | 118 | 111 | 102 | 104 | 111 |
| 黄色ブドウ球菌 | 92 | 80 | 81 | 79 | 70 | 80 | 78 |
| E.coli | 106 | 96 | 91 | 86 | 82 | 82 | 87 |
| 大腸菌群 | 115 | 112 | 103 | 93 | 83 | 79 | 94 |
| サルモネラ属菌 | 96 | 94 | 87 | 77 | 78 | 82 | 84 |
| 亜硝酸根 | 70 | 58 | 77 | 66 | 69 | 66 | 67 |
| 計 | 615 | 561 | 557 | 512 | 484 | 493 | 521 |
技能評価試験結果
《一般生菌数》
96%の参加者の報告値が管理限界線内*1にあり、良好な結果と評価されました。その割合は、昨年度(97%)とほぼ同程度の高い正答率となっています。
管理限界線を上回った参加者の検査工程記録書*2を精査すると、検査手順及び結果の算出方法を習熟していないことによるものと推察されました。また、結果の報告数不足(統計処理上3点が必須)や計算ミスも認められました。
《黄色ブドウ球菌》
88%の参加者の報告値が管理限界線内にあり、その割合は昨年度(93%)よりは少し下がりましたが、初年度の2016年度(47%)に比べると格段に検査担当者の技能が向上している表れと考えられます。これは、菌数の計測法または希釈倍率を誤って算出しているケースが減少していることが反映されています。一方で、毎回認められていますが、試料液を培地に塗抹する量が一般生菌数と異なるにもかかわらず、同量で計算されているケースがあります。(統計処理上3点が必須)や計算ミスも認められました。
《E.coli》《大腸菌群》
陰陽性を正しく判定できた割合はE.coliは98%、大腸菌群は98%でした。E.coliは昨年度(98%)と同程度、大腸菌群は昨年度(94%)に比べ正答率はやや高くなりました。正しく判定できなかった原因は、陽性コロニーの見極めが不十分と推察されます。陽性が疑われるときは、推定試験のみで判定せずに確定試験、完全試験に進めることをお勧めします。
《サルモネラ属菌》
陰陽性を正しく判定できた割合は97%で昨年度(98%)とほぼ同程度の高い正答率となっています。正しく判定できなかったケースは試料の取り違え、コンタミネーションが原因と推察されました。
《亜硝酸根》
Zスコア2以内かつR*3が管理限界線以内の参加者は83%で、昨年度(87%)よりやや低くなりました。管理限界線を上回ったケースは、検査の操作性または標準溶液等の試薬や検量線の作成方法に原因があると推察されました。この場合、3点間のデータの”ばらつき”が大きいことから、安定した操作によらないために再現性が悪い等、検査の習熟度に原因があると考えられました。
2022(令和4)年度も精度管理事業を無事終了できましたこと、参加者の皆様に改めて感謝申し上げます。過去最高だった昨年をさらに超える多くの方にご参加いただき、この事業がますます多くの食品検査施設から必要とされていることを実感しています。この技能評価試験は年2回実施しております。皆様のご参加をお待ちしております。
一方、もう一つの精度管理事業である検査技術実技研修会は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を受け、この9月に4年ぶりに開催いたしました。定員を超えた申し込みをいただきました。(施設の都合でこの研修会は最大で6名までしか受け入れることができません。)次回の開催をお待ちいただきたいと思います。
*1:参加者全体の報告値の平均値の30%(下部限界線)以上及び300%(上部限界線)の範囲内にあるデータの割合(%)
*2:検査結果とともに、検査に使用した培地、試薬、培養時間、検量線の作成方法(亜硝酸根検査の場合)など参加者から提供された情報記録
*3:参加者の値のばらつき。値が大きいほど一定の操作によらないため、不安定で再現性の悪い状態で検査している等、検査操作の習熟度に原因があると考えられる。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
品質保証部 柴田清弘



