ハム・ソーセージでは、JAS格付のため検査は第三者検査機関(食肉科研)にご依頼いただいていますが、JAS法の認証基準には「格付のための試料の検査を自ら行う」場合についても定められています。この場合、「イ 試料の検査に関する事項」及び「オ 格付のための機械器具の管理に関する事項」を定め実施すること、人的要件として、「格付検査担当者技能研修を定期的に受講している者」を置くとされています。
このイ及びオの考え方は、現在のJAS認証工場の検査担当者にも役立つのではないかと考え、それらに特化した「格付検査担当者技能研修会」を1年に1回開催してきました。しかし、令和2年度以降新型コロナウイルス感染症拡大によって、実技が中心である本研修会は開催を見合わせてきました。
今年に入り、新型コロナウイルス感染症はこの5月に5類に移行するとの発表を受け、ご要望があれば少人数であっても開催しようということで、令和5年6月22日に、4年ぶりに開催する運びとなりました。
研修会の内容
本実技研修会では、特にJASの官能検査について、食肉科研と等しく評価する技能を習得、維持していただくことを第一の目的としています。
JASの品位は、「外観」、「色沢」、「肉質」、「香味」に分けて、特級は優良、上級は良好、標準はおおむね良好が基準とされています。実際に同じ製品を参加者と食肉科研の担当者が評価することで合否判定の線引きなどの擦り合わせをします。
今回はベーコン3点、ボンレスハム1点、ロースハム1点、ウインナーソーセージ1点、フランクフルトソーセージ1点を順番に提供しました。製品ごとに、JASのどの等級に適合するのか、どの点が良いのか、良くないのか、良くないとすれば具体的にどこなのかを発表していただきました。
参加者の評価は、特にベーコン、ハムについてやや厳しめでした(これまでも同じ傾向にあったのですが)。これは、製品の情報なしに評価すること、初めて評価する製品であること、そして、食肉科研が見守る中での評価であることによるものと思われました。
ロースハムにはいくつか「血斑」が見られたのですが、参加者はその指摘をしたものの、それだけでNGとは評価していませんでした。この点は食肉科研の評価と一致していましたので安心しました。
難しいのは「香味」の項目で、特に熟成風味の評価については意見が分かれるところでした。熟成風味を評価するときには、鼻をつまんで、口の中でよく咀嚼してから鼻をつまんだ手を放して鼻腔を通る香りを感じて評価していただくことをお勧めしています。この方法は、特に「熟成風味」の評価に役立つと思います。
この研修会では、官能評価の他に、ベーコンから赤肉部を採取する実習やソーセージの水分測定の実習も行っていただきました。
赤肉部の採取実習では、参加者4人1組のグループに分かれていただき、1グループにベーコンブロック約500gをお渡ししました。最初はナイフの握り方もぎこちない様子が見られましたが、グループメンバーの取り扱いを参考にしながら慎重に作業されました。ちなみに、当方がお勧めしている握り方は、親指と人差し指で、包丁の柄の付け根部分を挟んでしっかりと柄を握るやり方です。
赤肉採取箇所はイラストでお示しして当方の担当者が教授します。ベーコンは切断してみないと赤肉の状態がわかりませんので、参加者は戸惑いながらも、食肉科研担当者に質問しながら、また、グループメンバー同士でアドバイスし合って熱心に取り組んでおられました。
参加者の動きを見て感じたことは、ナイフを使った試料採取の経験の少ない方は、ナイフをやや立てて赤肉部をくり抜こうとしてしまいがち、ということです。無理をしないためには、まずはできるだけブロックの中心部を、2㎝ほどの幅に切断して、両面の赤肉の付き具合を目視確認して、1枚のベーコンを半分(あるいは3分割)にした後に、赤肉を切り取る方法が良いと思います。
食肉科研での赤肉中の粗たん白質結果と各工場における検査結果に差がある場合の要因は、検査法や検査手技の違いの他に、赤肉採取箇所の違いが考えられますのでこの実習は大きな意味があると考えています。また、適切な試料調製のためには、検査に必要な赤肉重量はわずかであっても、必要量だけ採取するのではなく、前述の、2㎝ほどの厚さにした1枚全体から採取するといったように、できるだけその試料を代表するように採取することも大事ではないでしょうか。
本研修会は、他社製品を、他社の検査担当者とともに評価できる貴重な機会です。今後もご要望があれば開催したいと考えておりますので、「こんなことを取り入れてほしい」といった御意見等がございましたらお聞かせください。
最後に、今年度の品質管理責任者等の資格取得のためのJAS専門講習会は、4年ぶりに対面で開催する予定です。準備が出来ましたらご案内いたします。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
専務理事 猪口由美



