食中毒統計から見えてくる『新型コロナウイルス』と『ノロウイルス』
食中毒発生件数は、コロナ禍前の令和元年が1,061件、令和2年は887件、令和3年は717件と減少しました。また、患者数についても、令和元年が13,018人、令和2年が14,613人、令和3年が11,080人となり、令和3年は事件数及び患者数ともに過去20年間で最も少なくなりました。
これについて厚生労働省は、令和2年4月以降、日本のどこかの地域で緊急事態宣言やまん延等防止措置といったことがなされていた状況の中で、飲食店は営業時間を制限したり、人数の制限をしたり、手洗いが徹底されたことなどが一つの要因と説明しています。
令和4年になりますと、食中毒発生件数は944件(速報値)と前年を上回りましたが、これは令和4年3月にまん延等防止措置が解除され、人流が増えたことと関係しているようです。一方、患者数は6,405人(速報値)と減少傾向が続いています。
『新型コロナウイルス』と『ノロウイルス』の予防に関する共通点
例年最も多くの患者が発生するノロウイルス食中毒の流行は、2017年以降低調に推移していました、新型コロナウイルス出現以降の発生は、さらに少なくなっています。この要因について野田 衛先生(麻布大学客員教授)は次のように分析されています。
① 新型コロナウイルス対策がノロウイルス対策にも有効
皆さんが日々実施されている手洗い、手指消毒、マスク着用、環境の消毒等がノロウイルス等の他の感染症対策にも有効に働いている。② 人流抑制に伴う感染機会の減少
新型コロナウイルス感染拡大防止のための人流抑制対策により、他のウイルスの感染機会も減少した。③ 飲食店の営業自粛等による外食の機会の減少
ノロウイルス食中毒の多くは飲食店で発生している。しかし、飲食店の営業自粛に伴い、飲食店での飲食機会や大人数での会食機会が大きく減少し、ノロウイルス食中毒が減少した。
また、人流抑制による旅行の機会の減少に伴い、旅館等の利用も減少した。学校においても新型コロナウイルス対策として安全な給食のサービスが行われた。④ 高齢者施設への面会機会の減少
高齢者施設でのノロウイルス集団発生は、従業員や面会者等、外部からの訪問者がウイルスを持ち込み発生することが多いとされている。高齢者は新型コロナウイルス感染により重篤化や死に至る危険性が高いことから、多くの施設で訪問者との面会は控えられた。このため、外部からノロウイルスが持ち込まれる危険性は低くなり、高齢者施設での集団発生は減少した。⑤ 感染者の受診控え
医療機関での新型コロナウイルスの院内感染や外出による感染リスクを恐れて、感染者が医療機関の受診を控えた。特に、ノロウイルス感染では、一般に数日で回復し、有効な抗ウイルス剤もなく対処療法しかないなど、受診を控えることは想定される。
手洗いと、殺菌力を発揮するアルコール
さて、新型コロナウイルス感染拡大以降、手洗いの後にアルコール消毒することが一般的になってきました。また、手洗い設備がない部屋に入室するときも、手指にアルコール噴霧することが習慣化されてきました。
ウイルスは、脂質でできた何層もの膜に覆われています。この脂質の保護膜を取り除き、破壊することによりウイルスたんぱく質は崩壊します。ですから、この保護膜を破壊するために、石けんを使った手洗いは欠かせません。親指や指先、指の間などは手指衛生が不十分になりやすいので、流水と石けんを使い、指の間、手首、爪の間などを含め、ていねいにしっかり時間をかけてこすり洗うようにしましょう。
アルコールも脂質の保護膜を破壊しますので、手洗いがすぐにできない状況では、アルコール消毒液も有効ですが、手指に脂が残っているとその効果は薄れてしまいます。
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは「手指衛生の全工程時間:20~30秒」と定めています。加えて、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とWHOのガイドラインでは「10~15秒間擦り合わせたあと、手が乾いた感じであれば塗布量が不十分」とされています。アルコールを効果的に使って、これまで実施してきた「手洗い」を徹底し、食中毒を防ぎましょう。

文責:一般社団法人 食肉科学技術研究所
微生物部長 中島誠人



